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 結局、そうなるんだよ 後編

 (前回からの続き)さて、意を決して、いざ「カメラのキタムラ」へ。今回査定してもらうのは、20年前に清水の舞台から飛び降りるつもりで購入したわりには、一向に出番のなかったライカMPを含む3台。これらを下に出して支払いが70,000円を下回れば、Zfが買えるかも。そんなふうに考えていた。

 30分ほどかけて念入りに査定してもらった結果、提示された金額は僕の予想をはるかに上回っていて、正直驚いた。やっぱりライカは強いなあ。それに聞くところによると、買い取りではなく下取りの場合、査定額がプラスされるらしい。さらにただいまキャンペーン中につき上乗せ分があるということで、要するにすごくいいタイミングだったわけだ。そうなれば話は早い。

 気を良くした僕は、Zfレンズキット(Z40mmF2)にZ24~70mmF4SズームレンズとFマウント用アダプター(手持ちのレンズはほとんどFマウントなので)、さらにバッテリーチャージャーと予備バッテリーまでつけてもらい、支払額は33,430円に落ち着いた。さらに今ならニコンのキャッシュバックキャンペーンで35,000円返ってくるという。ということは、1,570円のプラスになる。これはいい買い物をした。というかほぼ物々交換だ。まるで縄文人になった気分だ。

 というわけで今、目の前にZfがある。せっかくだからF3(アイレベルファインダー)を出してきて、横に並べてみた。数字のデータではなく、印象を比較してみたかったからだ。

 まず横幅はF3のほうがほんの少し長いようだ。高さはボディ自体Zfのほうが高く、そのせいでかなり大きく見える。奥行きは、ボディ上部のカバーはほぼ同じなのだが、裏面はその下が数ミリ張り出しているので、Zfのほうが少し厚めだ。バリアングル液晶モニター部はさらに張り出していて、かなり嵩張っている。各部の作りはF3のほうが手が込んでいて高級感があり、さすがは往年のFシリーズ、といったところだ。

 Zfの全体のイメージは、大まかにコピーされたF3のボディにFM2のペンタ部をリニューアルして乗せた感じ。シンプルかつマッシブで、F3より若干大きめだ。もとになったFM2よりは優に一回り大きい。要するに、Zfは画像で見るイメージより大きいカメラなのだ。これはちょっと意外だった。だが長年F3を愛用してきた僕の手には良くなじむ。ちなみにボディの重さはF3とほぼ同じ。うん、悪くない。

 ちょっと残念なのは、F3やDfのボディに見られるMADE IN JAPANの表記がないこと。タイで作られているんだから当たり前だが、やはりここはこだわりたいところだよなあ。でも前回ララァが教えてくれたように、時代に合わせて人も変わっていかねば。ちなみに、やけにララァが出てくるけど、好きなキャラはセイラさんです、念のため。

 さて、そんなわけで紆余曲折の末、Zfは発売後十か月余りで購入と相成った。少しでも気になったカメラは、つまりそういうことになる運命なのですね。

 Zfはボディの高さがかなりある。写真ではわかりにくいが全高もZfのほうが高い。横幅はF3のほうが数ミリ長い。
 上部カバーからはみ出した裏面のボディと、さらに厚みのある液晶モニター部が見える。上から見ると、かなりゴツいイメージだ。

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 結局、そうなるんだよ 前編

 昨年の10月、ニコンのミラーレスカメラ、Zfが発売された。往年の名機、FM2に寄せたそのデザインが多少気になってはいたけど、その頃の僕はミラーレスカメラには全く興味がなかった。

 僕は光学ファインダーの信奉者なので、現在はニコンDfを愛用している。ミラーレスカメラに搭載されている電子ビューファインダーは、そのファインダー象に違和感があって一向に馴染めない。だからZfが発売された時も、あれは僕が持つべきカメラじゃねえな、といった印象だった(同じくミラーレスのZfcを使ってはいるが、あれは僕の中では別枠で、「ちょっとおっきいけどいろいろと便利なコンパクトカメラ」といった位置づけだ)。

 Zfは発売前から予約が殺到したらしい。一か月待ちは当たり前で、店頭のディスプレイも当初は実物大の写真ボードだけだった。半年ほどたってやっとディスプレイモデルが展示されるようになり、近場の家電量販店で何気なく手に取ってみたとき、僕はあることに気づいた。

 以前Dfの記事の中で、そのデザインから想像するに、近々F3に似せたデジタル一眼が出てくるかもしれない、と書いたことがあるが、Zfを手にした時の感触は、なぜかF3にとてもよく似ていた。F3といえば僕が最も長く愛用したフィルムカメラで、当時の金属製カメラとしては珍しく、ボディにグリップ状の出っ張りがあった。よく見るとZfにも同じようなグリップがある。なるほど、それでか。

 Zfのカタログには「FM2から着想を得た外観」と書かれているが、デザイナーが本当にFM2にこだわったのならこのグリップはなかったはずだ。そう考えると、確かにペンタ部(上部の三角形の張り出し)のデザインは違っているものの、全体的なフォルムはF3に似てなくもない。もしかしてこのカメラ、実質的には僕が予想していた「なんちゃってF3デジタル」なのではなかろうか。そう思った途端、急に興味がわいてきた。これはまずい。欲しくなったらどうしよう。

 あらためてカタログデータを調べてみると、センサーはフルサイズでボディは金属製。いいね!…いやよくないぞ。この流れはよくない。だがファインダーが僕の嫌いな電子ビューであることは動かぬ事実だ。ところがここでなぜか突然、僕はジオン公国軍パイロット、ララァ・スン少尉の言葉を思い出した。「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙」のなかで、彼女は確かこう言っていた。「人は変わっていくわ…私たちと同じように。」

 さて、気持ちが前向きになったところで(!!!?)、新たな問題が。そう、予算の問題だ。以前Dfを購入したとき、僕は後先考えずに行動した。だがあの頃と今では状況が違う。どうする?いや、タクシーは呼ばなくていい。

 実は今年、僕は長年にわたってため込んだカメラの断捨離を始めた。今までに4台のカメラを買い取り業者に売り払い、ちょっとした小遣い稼ぎをしてきたが、値段の折り合わなかったカメラがまだまだ残っている。これらを下に出せば、あるいは手持ちの予算でZfが手に入るかもしれない。幸い車で10分ほどのところに「カメラのキタムラ」がある。確か下取りもしていたはずだ。思えばここ10年ほど、「カメラ店」を訪れたことがない。久しぶりに専門店を覗くのも楽しいかもしれない。(つづく)

 右がFM2と同系列のFM3A。比べてみるとZfはかなり大きいイメージだ。
 右がF3。特徴的なペンタプリズムのカバーとグリップの赤いラインが目を引く。ZfはF3と比べてもまだ大きい。グリップの形状はF3のそれを踏襲しているように見える。
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 違う、ビストロじゃない。

 7月のある夜、昔の同僚たちに誘われて、久々にビストロに行った。

 何十年か前、僕には行きつけのビストロがあった。メニューにはもちろんコースもあったが、一品料理が充実していて、地中海風の、ニンニクを利かせた大変美味なるものが多く、それらをアラカルトで注文するのが常だった。なかでも「イワシのガレット」や「アサリの白ワイン蒸し」は僕のお気に入りで、固めのバゲットによく合った。スタッフの人選も素晴らしく、店内はいかにもビストロらしい楽しげな雰囲気に満ちていた。

 今でもよく覚えているのが、友人の結婚式の帰りに立ち寄ったときに、マスターが引き出物のカニの足(そういう時代のお話です)で一品作ってくれたこと。そういえば、学生だった頃は店に行くとマスターが「おなか空いてる?それとも軽く食べる?」とか「今日、いくら持ってるの」「ワインはどうする?」などと聞いてきて、それに見合った料理を作ってくれたっけ。いい店だったなあ。

 その店が無くなってからだいぶ時が経ち、今ではビストロなんていう形態の店自体が近隣ではあまり聞かれなくなった。だから今回会食の誘いが来て、会場はビストロだと聞いたときにはもう期待しかなくて、しかもソムリエがいるということで、当日がすごく楽しみだった。 

 さて、こうして当日を迎えたわけだが、結論から言うと、僕は二度とあの店にはいかないだろう。まず第一にソムリエはとうの昔にやめていた。そりゃそうだ。この店にはワインリストすらないんだから、仕事にならないはずだ。第二に店長は「今はワインの値段の変動が激しいのでリストを作れない」という。ちがーう!そもそもリストが無ければワインが選べない。値段が書けなくてもリストだけは作っておくべきだ。日本では「時価」という便利な言葉があるのに、これではメニューを見せずに料理の注文を聞くようなものだ。そんなこと、どう考えたってあり得ない。

 第三にそのメニューだが、なぜかイタリア料理(ピザやパスタ)や和風の料理が多い。なんだよそれ。ここはビストロじゃないのかよ。ビストロとは、気軽にフランスの家庭料理や田舎料理などを楽しめる居酒屋もしくは小料理屋、という意味だったはずだ。だがここのメニューにそれらしいものはほとんど見当たらない。

 唯一これは、と思われたパテ・ド・カンパーニュ(本来はミンチ肉とレバーなどをテリーヌ仕立てにしたもの)も、出てきたのはほぼペースト状のレバーのみ。火の入り方も不十分で血生臭い。レバ刺しが好きな人向けならそれでもいいだろうが、少なくともこれをパテ・ド・カンパーニュと呼ぶのはかなり抵抗がある。

 結局ワインはシャルドネ(白ワインの原料になる葡萄の品種)で5,000円以内、と注文したが、出てきたのはイタリアのワインだった。もちろんイタリアにもシャルドネで作られたワインはあるので、これは大きな問題ではないけれど、チリワインならもっと安くて美味しいものがある。僕の知ってるラインナップなら、3,000円で客に出しても十分儲けの出るものがいくつもある。ワイン界隈では有名な話だから、一時(いっとき)とはいえソムリエを擁していた店なら、そのくらいは勉強してしているはずなんだがなあ。

 というわけで、少なくとも本来のビストロがどんなものかを知っている人は、こういったビストロとは名ばかりの店に行ったら絶対失望するであろう。もう一度言うが、僕は二度と行かない。

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 夏といえば怪談 NHKのご乱心

 以前にちょっと紹介した話だが、あのお堅いNHKが、2009年あたりから妙に心霊系の番組に力を入れるようになった。局内で、いったい何が起きていたのかはわからない。だがその番組数は、僕の知っているものだけでも民放の比じゃない。ざっくり一覧にしてみると…。

2009年  「最恐怪談夜話」「日本怪談百物語」

2010年  「最恐怪談夜話2010」「フロンティア 異界百物語国際版(国際共同制作)」「日本怪談百物語2」「COOL JAPAN お化け」「妖しき文豪怪談(4回シリーズ)」

2011年  「日本怪談物語」「新日本風土記スペシャル 妖怪」

2013年  「幻解!超常ファイル(現ダークサイドミステリー)」放送開始 「超常現象(3回シリーズ)」「BS歴史館 大江戸妖怪ブーム」「BS歴史館 日本最強の怨霊 平将門」

2015年  「日曜美術館 あやしおどろし妖怪絵巻」 「新日本風土記 お化け屋敷」

2017年  「真夏の夜の異界への旅(3回シリーズ)」「スーパープレミアム 京都異界中継(4時間にわたって京都から百物語を生中継)」「COOL JAPAN 怪談~KAIDAN」

2018年  「異界百名山 体験者が語る不思議な話」「新日本風土記 あの世 この世」

2019年  「こわでん 怖い伝説(3回シリーズ)」「オープンマインド 小泉八雲が愛した日本の原風景」「趣味どきっ!京都・江戸 魔界巡り(全8回)」「プレミアムドラマ 怪談牡丹灯籠」

2020年  「大江戸繁盛記 四谷怪談」「新日本風土記 妖怪の国 精霊の森」「業界怪談シーズン1」「怖い絵本(現在も断続的に放送中)」

2021年  「劇画怪談(3回シリーズ)」「関口宏のそもそも 妖怪」「業界怪談スペシャル(再編集)」

2022年  「ホラー短歌の世界へようこそ(全6話)」「歴史探偵 妖怪大国ニッポン」「業界怪談シーズン2」「水木しげるの妖怪バンザイ!」

2023年  「NHK WORLD YOUKAI(国際放送、外国人向け番組 全?話)」「業界怪談シーズン3」「業界怪談シーズン4」

2024年  「新日本風土記 入らずの森 畏れの杜」

 どうです、この威容。いやむしろ異様と言うべきか。毎年のように、何やら怪しげな番組を放送しているじゃないですか。僕が知らない番組や再放送を含めると、のべ放送回数はさらに増える。さすがの僕もあきれてものが言えない。

 もちろん天下のNHKだから、内容が高度な教養番組めいたものが多いが、なかには「この番組、ホントに作る必要あったのか?」と疑問に思うようなものもある。「劇画怪談」や「ホラー短歌の世界…」などはその良い例で、いったい誰がこんなアイディアを思いつき、なぜそれを採用したのか、理解に苦しむ。

 そんな中で昨年は、一覧にもあるように心霊にかかわる番組は、僕が知る限り「新日本風土記」1本だけ。それも地域の伝承を紹介するスタイルのおとなしめの演出だ。そういえば長寿番組「ダークサイドミステリー」も数年前から心霊やUFO・UMAといったキワモノは取り上げていない。NHKの心霊熱、少し下火になってきたか?

 さて、ホラーマニアの僕は、今年も7月の初めに心霊番組の放送予定を調べてみた。これは僕にとって恒例行事みたいなもので、きちんと調べて紹介してくれるブログが複数存在するので重宝している。だがしかし、今年の心霊番組は…あらあら、ほぼ全滅じゃないですか。何しろお約束の「本当にあった怖い話」までもが「放送されると思うが現時点で情報なし」というありさまだ。

 確かにここ数年、民放の心霊番組はヤラセ疑惑などで叩かれ、放送自粛かなんか知らんけど、見る影もないありさまだ。NHKについてもその時点で確認できた心霊系は皆無。ようやく我に返ったか?

 ところが7月の下旬になって、(僕にとっては)いきなりTBSが「口を揃えた怖い話」を放送。改めて調べてみたところ、情報が更新されていて、8月14日にはテレ東が「真夏の怪奇ファイル」を、同じく16日にはフジTVが「本当にあった怖い話 夏の特別編」を放送予定であることが判明。NHKでも8月3日に「業界怪談スペシャル(再)」と「こわでん 怖い伝説3(再)」をBDレコーダーの番組表で初めて確認した。さらに同じ日に、「業界怪談シーズン5」が放送を開始するというので、慌てて録画予約。今回も3回構成らしい。新規ということは、事前の情報がなかっただけで虎視眈々と制作を進めていたということだ。NHK、我に返ったと思った僕がバカだった。まったく反省の色がない。けしからん!

 だがそんなことを言いつつも、もちろんホントはうれしくて仕方ない。特に「業界怪談」シリーズは「友人のいとこの姉」とか「リアクションの大きい芸人」とか「すぐ体調を崩すアイドル」とかではなく、その業界の、当時者本人が顔出しで登場するのでリアリティが半端じゃない。仮にこれがヤラセだとしても、ここまでこだわれば文句はない。そういえば「異界百名山」も同じような構成だったっけ。さすがはNHK、腐っても鯛。

 というわけで日本放送協会様、僕は受信料をきちんと払っています。だからこれからも民放がまねできないような良質(?)の、けしからん心霊番組をたくさん放送してくださいね。