6月のスズメたち
ここ数年、6月は庭にやってくるスズメを眺めながら暮らしている。春に生まれた雛が独り立ちする時期に当たっているので、一つの群れの中にいろいろな行動パターンが見られ、特に子育ての様子や、やっと自力で飛べるようになった小さな雛たちが少しずつ成長していく様は見ていて何ともほほえましい。
この時期はまだ成鳥と雛の見分けがつきやすい。顔の部分の色が薄いのが早い時期に生まれた若鳥で、嘴の端にまだ黄色みが残っていて、ふっくらした体型の個体は遅く生まれた雛だ。冷蔵庫で2日ほどおいて固くなったご飯を庭先に撒いてやると、親子で飛んできて、口移しでご飯粒をもらっている。飛べるようになってもしばらくは親鳥に食べさせてもらうわけだ。加えて今年は、雨の日に成鳥がご飯粒を口いっぱいに咥えて飛び去る様子が何度も見られた。おそらくまだ飛べない雛のために親鳥が巣に運んでいるのだろう。
興味深いことに、親子連れは他の成鳥の食事が終わった頃を見計らって降りてくることが多く、餌に群がる成鳥の勢いに気おされて(かどうかは本人に聞いてみないとわからないのだが)、時間調整をしているように見える。これが一般的な傾向なのか、この群れの特徴なのかはわからない。
こうした時期が過ぎると、雛がいくら鳴いても親は餌を運ばなくなる。仕方なく自力で餌を食べるようになるのだが、まだ上手に食べることができず、成鳥が梢に戻った後も地面のあちこちで食べ続けていたりする。雛たちが最も無防備になる瞬間で、後述する理由から見ている側も気が気ではない。
ところでこの時期の雛は、餌をくれる人間に警戒心を持たなくなるようだ。それどころか、時には近くまで寄ってきて催促したりする。ご飯を撒いてやると手元まで寄ってきて食べることもあり、実に愛らしい。が、これは困ったことでもある。人里で共存しているとはいえ、スズメは自然の一部であると考えるべきだろうし、うちの庭は地域猫の通り道になっているので、あまり警戒心を鈍らせるとスズメたちを危険にさらす恐れがある。加えて今年は、敷地内で体長1メートル近くあるヤマカガシ(蛇の一種)をすでに2度目撃しているので、これも心配の種だ。ネットの動画では、手に乗ったり、手の中で眠りこけたりしているスズメをよく見かけるが、少なくとも我が家の環境ではそこまでやるのは行き過ぎだろう。
さて、スズメたちだが、盛夏の頃には今年生まれた雛たちも成鳥と見分けがつきにくくなってくる。そうなればもう一人前だ。その頃には庭に咲く夏の花々の手入れや、隣に借りた畑で育てている夏野菜の収穫が忙しくなる。そうなるとスズメどころではない。カラスが収穫前の野菜を狙って集まってくるからだ。
正直なところ、カラスだって腰を据えてじっくり付き合えば、それほど悪い奴だとは思わない。だが利害が絡む以上甘い顔はしていられない。今年生まれたスズメたちが独り立ちした後は、カラス対策に追われる毎日だ。こんな風にして、僕の夏は過ぎていく。
