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 最近の心霊現象

 また馬鹿なことを・・・と思われるかもしれないが、日本では夏と言えば怪談。お盆には先祖の霊が帰ってくるから、そこかしこに霊があふれていてもおかしくはない。TVでは心霊ものの番組が放送され、毎年の定番番組もある。年甲斐もなく、これが大好き。最近ではNHKまでもが毎年のように心霊番組を組んでいる。NHK,どうしちゃったんだろう?でもさすがにNHKだけあって、質は高い。古いものでは2009と2010年の2回に渡って放送された「最恐!怪談夜話」。数名のゲストが順に現代怪談(実話?)を語る番組。ファンも多いらしく、いまだにネットで話題に上る。僕も大好きで、毎年夏になると、録画したディスクを引っ張り出してくる。2017年には「京都異界中継」と銘打って、4時間にわたる生中継番組を放送。百物語になぞらえて、京都にまつわる百話の怪異譚を紹介した。好評だったらしく、2時間の「濃縮版」を複数回再放送していた。NHKではこのほかに「ダークサイド・ミステリー」という定番(現在も放送中)もあって、これはどちらかといえば検証番組。心霊現象に限らず、UFOやUMA,さらには未解決の事件や歴史ミステリーまで扱うので、幅が広くて楽しめる。ただし、検証番組であるから、気をつけないと夢やロマンを微塵にぶちこわされることがある。その点については容赦なし。民放でも「世界の怖い夜」「本当にあった怖い話」等の他に、単発のスペシャルもある。中でもお気に入りなのが、フジテレビ系列の「世界のなんだコレ!ミステリー」。厳密には、その中の不定期コーナー「ハッピーゴーストハンティング」。リッチ・ニューマンというそこそこ有名(らしい)な心霊研究家が紹介する世界のゴースト物件(ホテルが多い)を、日本の取材チームが同行してレポートするコーナー。中身はたいしたことは無いが、必ず何か起こるのが良い。リッチさんの心霊研究家らしくない軽ーいキャラも好きだ。さて、前置きはこれぐらいにして、本題に入ろう。  

 こうしていろいろな心霊番組をほぼ全てにわたってチェックしている僕が、この十数年不思議に思っていることがある。それは心霊のスタイルについてだ。スタイルと言っても勿論体型のことではなく、「写り方」のことである。            

 ご存じのように、最近の日本のホラー映画は世界的に評価されており、アメリカでは相当数のジャパネスク・ホラー・ムービーがリメイクされているほどだ。中でも有名なのが「リング」と「呪怨」。さて、ここからが問題。それ以前の動画に写る霊は移動する時にスーッと平行移動するというか、宙に浮いているというか、そういうのが定番だった。ところが「リング」「呪怨」以降、四つん這いで移動する霊が多く写るようになった。それだけではない。欧米で撮影された動画であるにもかかわらず、長い黒髪で顔を隠した霊(貞子!?)がやたら多いのだ。金髪とかあまり見たことがない。しかも、白いワンピースも共通。これってどういうことだ?

 例えば、死後の世界も現世とほぼ同じで、テレビや映画館があるとしよう。霊たちが現世で最近流行りのプログラムを見て、「あたし、次出る時このパターンでいってみようかな」「良いんじゃない?髪も黒く染めてさ。最近のトレンドらしいし」などと会話を弾ませているとしたら・・・なんだかちっとも怖くねーぞ。いや、違う意味で怖いか。  

 もう一つ。これは欧米の動画に多いんだけど、あっちの霊ってやたらに脅してくる。急に曇りガラスにくっついて姿を現してみたり、いきなり近くに来てびっくりさせたり。しかも、脅す気満々の表情してるし。そんな彼等、彼女らはいったい何が目的で出現してくるのだろうか。さらに、これは日本の幽霊も同じだが、なぜか霊たちはおどろおどろしい顔をしている。幽霊画の掛け軸を見るとよくわかる。穏やかな、生前と変わらない表情をしているのは、江戸時代の有名な絵師、円山応挙の描いた「幽霊図」ぐらいだ。 知っている人もいるだろうが、「四谷怪談」のお岩さんが醜い顔をしているのは、夫である田宮伊右衛門に、副作用で皮膚のただれる遅効性の毒を飲まされたからだ。つまり、お岩さんは生きているうちにあの崩れた面相になったわけで、お岩さんの幽霊はある意味、生前の姿で現れてくるのである。ところがこの「四谷怪談」以降、幽霊と言えば片側の頭髪が脱毛し、まぶたが腫れて垂れ下がった「お岩モード」が当たり前になってしまった。掛け軸にも多く見られるし、新しいところでは昭和の漫画「墓場の鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎の発端となる話)」で、鬼太郎の母親である「幽霊女」がこのモードを取り入れている。(ついでに言うと、父親はミイラ男。死んで腐った体から、子どもを見守りたい一心で死にきれない片目が抜け落ち、現在の「目玉のおやじ」になる。)ただし、お岩モードではないにもかかわらず、恐ろしい形相の幽霊も少なくない。これは当時、疫病で亡くなった人の遺体や、飢餓や老衰で衰弱して亡くなった人の遺体を参考にしたためではないかという説が有力だ。つまり死後の姿だ。目が白く濁っていたり、歯が妙に長かったりするのは、つまりそういうことなのだろう。そう言えば「古事記」においてもそういう場面がある。

 黄泉の国へ行った(亡くなった)妻のイザナミに会いたくて、出向いたイザナギが見たものは、腐れ果てて「ウミワキウジタカ」ったイザナミの亡骸であった、というくだり。日本の昔話って、妙にリアルというかエグい表現が多い。「因幡の白ウサギ」だって、よく考えるとがまの穂ぐらいでよく治ったなっていうぐらいの大けがだし、「かちかち山」の狸がおばあさんにした事なんて、ちょっとここに書けないぐらいすさまじい。肉食じゃない日本人の記述とは思えない。いや、肉食してたでしょう、多分。

 またまた話がそれてしまった。要は、「動画に写る霊のほとんどは、必要以上に恐ろしい姿をしてますよね」ということが言いたかったのだ。特に四つん這いなんて意味不明。まさか、今更「足がないから・・・」というわけでもあるまい。実際、足あるし。

 最後は撮影者の根性について。彼等は絶対撮り逃がさない。何があっても決定的瞬間はものにするし、ここでビデオ回してんのおかしいだろ、という瞬間にもカメラを止めることなど絶対に無い。まさに「カメラを止めるな!」状態だ。すごいっ!

  ・・・今思いついたんだけど、もし霊が生前の姿で現れて、そこにいる人たちが「あっ!おばあちゃんだ!おばあちゃーん!久しぶりー!」なんて言いだして、そこで撮影者が根性出して、「カメラを止めるな!」状態だったら、下手すると2時間枠では収まらない心霊ビデオが撮れてしまったりするんだろうか。「お盆 第2日」とか言って。やっぱり放送枠とか考えると、どんな根性カメラマンでもケツまくって逃げ出すような恐怖演出が必要なのかも。画像が乱れて撮影終了、みたいな。そっかー、なるほど、そういうことだったのか。ちゃんと先方にも考えがあってのことだったのね。