ワン。ワンワン。
以前「ピーピー。」について書いた。今回は「ワン、ワンワン。」これは何かというと、僕のスマホの着信音だ。どんなときにも人があまり違和感を感じないようにと、(僕としては)考えに考えて設定した。音量も遠くで犬が吠えている、といった体(てい)のレベルにしてある。おかげさまで多くの場合、僕のもくろみは当たったと言っていい。着信しても誰も気付かない。だが、ある特定のシチュエーションでは逆効果になる場合もある。
以前からお伝えしているとおり、うちでは五匹の猫を飼っている。そのうちの3匹が10歳を超えていて、持病をもっているものもいるので、動物病院に行くことが多い。そのタイミングで誰かが僕に電話をかけてくると、待合室で「ワン、ワンワン」という着信音が鳴る。猫をつれている飼い主の近傍で犬の鳴き声がするわけだ。いくら音量が絶妙とは言っても、そりゃあ、みんなこっち見るわなあ。仕方がないから駐車場の車で待つ。すると今度は動物病院の近所で飼われている犬が吠える。これがまたよく吠える。しかも吠え声や吠え方が着信音にそっくりなのだ。さらに夕方の診療時間は、娘が仕事の帰りに、買い出しの内容を確認するために電話してくる時間に当たっている(※)。さらにさらに僕は、これも前からお伝えしているとおり、メールやラインが大嫌い、ときている。というわけで、動物病院ではしょっちゅう、周囲の人々を翻弄したり、自分が翻弄されたりしている。そして困ったことに、こういったシチュエーションを、僕はわりと楽しんでいる。
※ うちでは夕食は僕の担当なので、どんな食材を使うかは僕が決める。
付記 そういえば昔、僕の知り合いで同じようなことをやっている人がいた。まだスマホが一般化する前のことだ。彼の携帯の着信音は「ホー ホケキョ」。なかなかにリアルで、僕はまんまと騙されたことがある。今思えば、特に初夏から夏にかけては、彼も今の僕と同じように混乱することがあったに違いない。面白いヤツだったが、今はどこでどうしているのやら。