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 いろいろと、天国に一番近い場所

 ゴールデンウィーク明けに茨城県常陸太田市にある竜神峡に行ってきた。日本最大級(全長375メートル)の吊り橋が売りで、5月にはそれに並行して貼られたワイヤーにたくさんの鯉のぼりが掲げられる。カミさんがそれを見たいというので、ドライブがてらに行ってみた。

 この吊り橋は龍神大吊橋といって、龍神川がせき止められてできたダム湖の上に架かっている。歩行者専用で、水面からは約100メートルの高さがあり、バンジージャンプの名所でもある。僕はここで生まれて初めての感覚を体験した。僕はもしかしたら、高所恐怖症なのかもしれない。

 橋を渡り始めてすぐ、なぜか僕は言いようのない不安に襲われた。頭上には五月晴れの空が広がり、爽やかな風が吹いている。橋は道幅もあり、ほとんど板材で覆われた手すりが両側をがっちり固めている。にもかかわらず、足がむずむずする。恐怖と言うよりは不安と言った方が当たっている。景色を眺める余裕がない。なんだこれ。僕は飛行機にも乗るし、東京タワーなども問題なく楽しむことができる。だが考えてみると、それらは密閉された空間だ。周囲が解放されていると、こんなにも不安を感じるものなのだろうか。見ればカミさんも同じような感覚にさいなまれている様子。早く終われ、と念じながら早足で歩き、ようやく対岸にたどり着いた。だが安心してはいられない。この吊り橋は観光用で、こちら側には道路がつながっていないから、駐車場に戻るにはもう一度橋を渡る以外に方法はない。どーすんだこれ。

 行きで多少慣れたのか、僕らの懸念をよそに帰りは思ったほどのことはなく、改めて周囲を見渡すと山々は新緑に覆われ、航路の下に当たるのか、飛行機雲もがいつもより間近に幾筋も見えていた。仰々しいハーネスをつけたグループはバンジージャンプの客だろう。思ったよりも多い。ビックリだ。駐車場に戻り、売店で聞いたところによると、橋の中央部の端から橋桁にあるプラットフォームに降りるそうで、その光景を想像するとまたもや足がむずむずした。今回自分の身に何が起こったのかはよくわからない。こんなことは今まで一度もなかったんだけどなあ。

 帰り道の途中で、来る時に看板を見た東金砂神社にも寄ってみた。一見ひなびた神社だが、実は対をなす西金砂神社とともに、創建806年という由緒正しい神社だ。坂上田村麻呂が蝦夷征伐の折に立ち寄り、多宝塔を建立したとか、ここって一体どういう地域?さらに72年に一度、東西の金砂神社をあわせて10日にわたる大祭礼(500人を超える行列が、神輿を中心として日立市水木浜までの道のりを往復する)が行われるという。西金砂神社から始まり、東金砂神社が三日遅れて出発するこの神事は、最近では2003年に行われた。72年に1度というと、前回は昭和6年(1931年)、次回は2075年。何ともすごい話だ。ちなみに第1回は851年、2003年の催事は17回目だそうだ。

 僕らが訪れた時にはそんな大それた雰囲気は一切なく、人気のない、小砂利を敷いただけの小さな駐車場をスズメバチが飛び回っていた。境内に関係者の姿はなく、参拝者もほとんどいなかったので、山のなかの古寺といった感じ。古寺、と書いたのは誤記ではなくて、神仏習合の影響か、境内に梵鐘や仁王門があったからだ。そのほかに小さな神社には珍しい田楽堂などもある。それらを古びた急な石段が繋いでいて、参拝者は木漏れ日のなかを息を切らせながら登る。この神社が2市町村にまたがる大祭礼の源だなんて、にわかには信じがたい。だが来てみて良かった感は大いにある。お気に入りのポイントが、また一つ増えてしまったな。

 この神社がある常陸太田市は袋田の滝がある大子町のお隣なので、せっかくだから袋田にまわって前回訪れた蕎麦屋で昼食を摂り、例の和菓子屋でお土産を買って帰った。次は西金砂神社に行ってみようかな。龍神大吊橋はもういいや。

 広角で撮っているので実感がないが、脚柱の高さは35メートル、鯉のぼりは一つ一つがフルサイズの大きさ。中央下やや右寄りに写っているカラフルな点々は100メートル下の湖面に浮かぶボート。
 橋の上は舗装されていて何ら不安を感じない・・・はずなんだけどなあ。途中、何カ所か下をのぞける窓がある。
 東金砂神社。駐車場から見た入り口。鳥居をくぐってすぐ右に折れ、この黒々とした山を登る。
 仁王門。急な階段を上ったところにある。次の階段が見えている。写っているのはうちのカミさんです(以下同様)。
 仁王門から田楽堂へと続く階段。
 三つ目の階段を上ったところにある拝殿。この奥に本殿がある。一般人はここまでのようだ。
 本殿裏からの眺望。山の向こうはおそらく高萩市あたり。その向こうは太平洋。

作成者: 835776t4

こんにちは。好事家の中年(?)男性です。「文化人」と言われるようになりたいなあ。

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