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 記念品?

 あちこちで良く石を拾う。本当はいけないんだろうなあ、なんて思いながら旅先で小さいやつを拾う。

 昔、「プライベート・ライアン」という戦争映画があった。スピルバーグ監督とトム・ハンクスがタッグを組んで制作し、第二次世界大戦のフランス戦線を描いた。その中で、ある軍曹が転戦するたびにその地域の土を缶に詰めて背嚢に入れるシーンがあった。あれに似ているかもしれない。とにかく、自分がそこを訪れた証(あかし)に石を拾ってくるのだが、性格がずぼらなものだから、どの石がどこで拾ったものだったかすぐわからなくなる。知らないうちに本箱の隅の一角が小さな砂利集積場のようになってしまった。

 新婚旅行でヨーロッパに行ったとき、フランスで「パリの空気の缶詰」なるものを見つけ、土産にしようとしこたま買い込んだ。知っている人もいるかもしれない。薄型の缶でかさばらず、何しろ軽い(当たり前だ)。成分表がついていて、酸素・窒素・二酸化炭素・アルゴンの他に「汚染物質」とある。そして注意書きも。「重要:開けるな/揮発性/真面目な人には有害」。ウンウン、そうだろうなあ。

 今でも1~2缶残してあって、開けてみたい気もするが、結局まだ一度も開けてない。地球の大気はどこまでも繋がっているわけだから、何十年かすればパリの空気が日本に巡ってくることもありそうだ。そう考えるとあの缶詰はあまり意味がないかもしれない。今ではパリ各地の空気を混ぜて詰めた缶詰に取って代わられてしまったとのことだが、これにも成分表がついているそうだ。「ルーブル美術館の空気 20パーセント」とか。いったいどうやって計測したんだろう?

 教師をしていた頃、こう思った。良い先生というのは教え子の心の中でいつまでも良い思い出として残るような人のことだろう。拾い集めた石ころのように、彼等の心の中に僕の記憶が何気なく残っていてくれたら嬉しいのだが、もしかすると「真面目な人には有害」だったりして。

「パリの空気」の缶詰(10×6㎝) 今は販売していないようだ。