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 畦道の花

 このあいだ、昼間に時間ができたので買い出しに出た。例によって大通りを避け、農道や生活道路を縫うようにして車を走らせた。河川敷に広がる、すでに刈り取りの済んだ水田地帯を抜け、ちょっとした坂を上がって台地の上に出る。道の両側には、もとは農家だったであろう敷地の広い家々が点在し、そのあいだを畑や草地が埋めている。このあたりは夏に2回ほど、車を止めてアオダイショウ(蛇です)が横断するのを待ってやったことがある、そんな道だ。

 買い物を済ませ、同じ道を逆にたどって帰る。夏の盛りに百日紅の花が咲いていたのはどの家だったかな・・・そんなことを考えながら坂を下り、直線の農道に入ったとき、左手になにやら鮮やかな色が見えた。車が近づくと、道路から一段下がった水田の畦に沿って、1区画、鮮やかな朱色の花をつけた植物が毛足の長い絨毯のように群生していた。段差に隠れていたので、行きには気がつかなかったらしい。そこかしこに咲くセイタカアワダチソウの黄色と鮮やかなコントラストを成していて、紅葉のようにも見える。あれは何の花だろう。農道なのでスピードは出ていなかったが、道が細いので後続車を考えると止まることもできず、細部を確認することはできなかった。ただ鮮やかな色彩だけが目に焼きついた。

 秋の花と言えば、コスモスや菊の類いを思い出すが、この花は見たことがない。かといって、直ぐさま植物図鑑で調べるのも野暮な気がした。だいいち、この手の雑草(だと思う)が並みの図鑑に載っているとも思えない。この道を利用しているほかの人たちはこの花に気づいているのかな、それとも、とっくに日常の光景になっているだろうか。何はともあれ、日々の生活のなかでの新しい発見に、僕は何とも楽しい気持ちになった。この場所を憶えておこう、そうすれば来年また見られるかも知れない。この水田の持ち主が、雑草と嫌って抜いてしまわなければいいのだけれど。

作成者: 835776t4

こんにちは。好事家の中年(?)男性です。「文化人」と言われるようになりたいなあ。

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