庭に新しい客が…。
5月に入ったある日、庭でやたらに技巧的(?)な鳥の鳴き声がした。今までに聞いたことがない声色で、定型があるというよりは思いつくまま、気ままに鳴いているという感じだ。いい声だがやたらと大音量で、聞きようによってはやかましい気もする。以来庭や近所でよく鳴いているのだが、なかなか姿を見ることができない。
ある朝その鳥が、スズメのために庭に撒いた冷蔵庫のご飯を食べに降りてきて、やっとその姿を見ることができた。全身赤茶色で嘴は黄色。目の周りに白い縁があり、それが目じりから尾を引くように伸びている。真っ先に連想したのはツタンカーメンの黄金のマスク。あの目の周りにある青いライン、あれを白くしたような感じだ。それ以外にはこれといった特徴がない。なんにせよ初めて見る鳥だ。
声ばかりでなかなか姿を見せず、写真が撮れなかったので、記憶を頼りにネットで調べてみると、どうもガビチョウという鳥らしい。漢字で書くと眉美鳥。なるほど。眼の縁の白い部分を眉になぞらえたのか。さえずりが美しい、とも書いてあるな。1970年ごろの鳥ブームの時に、その鳴き声を鑑賞するために中国から輸入されたもので、籠から逃げた個体が野生化して繁殖したという。でも僕が思うに、あの声量では室内で飼うにはうるさすぎるし、体色が地味で姿を鑑賞するのには向いていないから、故意に放たれたものも多いんじゃないかい?ブームが去った後、始末に困った業者が放鳥した、なんて話もあるぐらいだから。
現在日本では特定外来種に指定されていて、農作物の食害や、その大音量のさえずりが騒音ととらえられたことで、害鳥とされているんだって。ほら、やっぱりうるさいんだよ、誰が聞いても。実際、50mほど離れた林の中で鳴いている分には「おお、美しいさえずりじゃないか」などと吞気なことを言っていられるが、これを庭の植え込みでやられると、確かに騒音に近い。しかも1度鳴き始めると、結構長い時間鳴き続ける。他でやってくれと言いたい。でももとはと言えば日本人が金銭目当てで輸入したんだから、ガビチョウに非はない。勝手に連れてこられて、知らないうちに害鳥に指定されるなんて、ガビチョウにしてみればいい迷惑だろうなあ。
