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 夏といえば怪談 NHKのご乱心

 以前にちょっと紹介した話だが、あのお堅いNHKが、2009年あたりから妙に心霊系の番組に力を入れるようになった。局内で、いったい何が起きていたのかはわからない。だがその番組数は、僕の知っているものだけでも民放の比じゃない。ざっくり一覧にしてみると…。

2009年  「最恐怪談夜話」「日本怪談百物語」

2010年  「最恐怪談夜話2010」「フロンティア 異界百物語国際版(国際共同制作)」「日本怪談百物語2」「COOL JAPAN お化け」「妖しき文豪怪談(4回シリーズ)」

2011年  「日本怪談物語」「新日本風土記スペシャル 妖怪」

2013年  「幻解!超常ファイル(現ダークサイドミステリー)」放送開始 「超常現象(3回シリーズ)」「BS歴史館 大江戸妖怪ブーム」「BS歴史館 日本最強の怨霊 平将門」

2015年  「日曜美術館 あやしおどろし妖怪絵巻」 「新日本風土記 お化け屋敷」

2017年  「真夏の夜の異界への旅(3回シリーズ)」「スーパープレミアム 京都異界中継(4時間にわたって京都から百物語を生中継)」「COOL JAPAN 怪談~KAIDAN」

2018年  「異界百名山 体験者が語る不思議な話」「新日本風土記 あの世 この世」

2019年  「こわでん 怖い伝説(3回シリーズ)」「オープンマインド 小泉八雲が愛した日本の原風景」「趣味どきっ!京都・江戸 魔界巡り(全8回)」「プレミアムドラマ 怪談牡丹灯籠」

2020年  「大江戸繁盛記 四谷怪談」「新日本風土記 妖怪の国 精霊の森」「業界怪談シーズン1」「怖い絵本(現在も断続的に放送中)」

2021年  「劇画怪談(3回シリーズ)」「関口宏のそもそも 妖怪」「業界怪談スペシャル(再編集)」

2022年  「ホラー短歌の世界へようこそ(全6話)」「歴史探偵 妖怪大国ニッポン」「業界怪談シーズン2」「水木しげるの妖怪バンザイ!」

2023年  「NHK WORLD YOUKAI(国際放送、外国人向け番組 全?話)」「業界怪談シーズン3」「業界怪談シーズン4」

2024年  「新日本風土記 入らずの森 畏れの杜」

 どうです、この威容。いやむしろ異様と言うべきか。毎年のように、何やら怪しげな番組を放送しているじゃないですか。僕が知らない番組や再放送を含めると、のべ放送回数はさらに増える。さすがの僕もあきれてものが言えない。

 もちろん天下のNHKだから、内容が高度な教養番組めいたものが多いが、なかには「この番組、ホントに作る必要あったのか?」と疑問に思うようなものもある。「劇画怪談」や「ホラー短歌の世界…」などはその良い例で、いったい誰がこんなアイディアを思いつき、なぜそれを採用したのか、理解に苦しむ。

 そんな中で昨年は、一覧にもあるように心霊にかかわる番組は、僕が知る限り「新日本風土記」1本だけ。それも地域の伝承を紹介するスタイルのおとなしめの演出だ。そういえば長寿番組「ダークサイドミステリー」も数年前から心霊やUFO・UMAといったキワモノは取り上げていない。NHKの心霊熱、少し下火になってきたか?

 さて、ホラーマニアの僕は、今年も7月の初めに心霊番組の放送予定を調べてみた。これは僕にとって恒例行事みたいなもので、きちんと調べて紹介してくれるブログが複数存在するので重宝している。だがしかし、今年の心霊番組は…あらあら、ほぼ全滅じゃないですか。何しろお約束の「本当にあった怖い話」までもが「放送されると思うが現時点で情報なし」というありさまだ。

 確かにここ数年、民放の心霊番組はヤラセ疑惑などで叩かれ、放送自粛かなんか知らんけど、見る影もないありさまだ。NHKについてもその時点で確認できた心霊系は皆無。ようやく我に返ったか?

 ところが7月の下旬になって、(僕にとっては)いきなりTBSが「口を揃えた怖い話」を放送。改めて調べてみたところ、情報が更新されていて、8月14日にはテレ東が「真夏の怪奇ファイル」を、同じく16日にはフジTVが「本当にあった怖い話 夏の特別編」を放送予定であることが判明。NHKでも8月3日に「業界怪談スペシャル(再)」と「こわでん 怖い伝説3(再)」をBDレコーダーの番組表で初めて確認した。さらに同じ日に、「業界怪談シーズン5」が放送を開始するというので、慌てて録画予約。今回も3回構成らしい。新規ということは、事前の情報がなかっただけで虎視眈々と制作を進めていたということだ。NHK、我に返ったと思った僕がバカだった。まったく反省の色がない。けしからん!

 だがそんなことを言いつつも、もちろんホントはうれしくて仕方ない。特に「業界怪談」シリーズは「友人のいとこの姉」とか「リアクションの大きい芸人」とか「すぐ体調を崩すアイドル」とかではなく、その業界の、当時者本人が顔出しで登場するのでリアリティが半端じゃない。仮にこれがヤラセだとしても、ここまでこだわれば文句はない。そういえば「異界百名山」も同じような構成だったっけ。さすがはNHK、腐っても鯛。

 というわけで日本放送協会様、僕は受信料をきちんと払っています。だからこれからも民放がまねできないような良質(?)の、けしからん心霊番組をたくさん放送してくださいね。

 

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 夏と言えば…心霊は真夜中が好き?

 一昔前までは、夏といえば怪しい心霊ドキュメンタリー(と言うより、あれはバラエティーだな)が目白押しだったんだけれど、ヤラセや仕込みがバレたとかで、ここ数年は各局が自粛モード。脳内に今も中学生が住んでいる僕にとっては心寂しい限りだ。不思議なことに、今ではNHKがこの分野を牽引していたりするのだが、さすがはNHKというか、謎解きめいた内容でちっともロマンを感じない。唯一これは、と思った「業界怪談」という番組も、今年はすっかり鳴りを潜めているしなあ。

 そんなわけで、仕方なくYoutubeの心霊チャンネルを覗いたりするのだが、これがまた夜中に心霊スポットを訪れてリポートするだけで、どうも釈然としない。前にもどこかで書いたが、「音がした!」「声が聞こえた!」なんていう現象だけなら現場で何とでもなるし、たまたま撮れたという画像も説得力のあるものはほとんど無い。それに見ていていつも思うんだけど、なんで真夜中限定?確かにまともな人間は歩いていないだろうし、静かだからかすかな音声でも記録できるだろう。そんな業務上の利点以外に、「丑三つ時が一番出やすい」という話もあるけど、これって本当なのか?だって人を目指す幽霊ならいざ知らず、場所に出る幽霊はこんな時間に化けて出ても、見てくれる人なんかいないじゃんか。

 僕が好きな実話怪談でこういうのがある。ある日踏み切り待ちをしていると、線路の反対側にも女の子が一人、踏切が開くのを待っている。よく見るとなんだか向こう側が透けて見えるような…。えっ、これってもしかして…。やがて踏切が開き、恐る恐る歩き始める。そしてその女の子とまさにすれ違おうとした時、その子が自分を見上げて言う。「なんでわかったの?」思わず振り返ってみたが、女の子はもうどこにもいなかった…。これは真昼間の出来事だ。こういう話を聞くと、もしかすると普段何気なくすれ違っている見知らぬ人々の中にも、そういった存在が紛れ込んでいる可能性はあるよな、なんて思ってしまう。

 仮に心霊現象が実際にあるとして、僕がその立場になったら好き好んで廃ホテルや人里離れたダムなんかに、しかも真夜中に佇んだりはしないだろうなあ。だって怖いもん。心霊番組ではこういう場所は霊が集まりやすいとか言うけれど、本人たちに確認でもしたのだろうか?僕なら我が家や生前慣れ親しんだ場所をフラフラして、家族や知人を見守るに違いない。できれば気持ちよく晴れた空の下がいい。多分あなただってそうするだろう。もちろん地縛霊というものもあるが、それは現世で生きている我々が考え出した出現の形態であって、「そうなんです、僕、ここを離れられないんですよ」と霊が自己申告した、なんて話はあまり聞かないなあ。

 これもよく言われることだが、突然の事故で命を奪われた場合、自分が死んだことに気づかない霊がその現場に佇んでいるという説。これだって、もとは人間なんだから、1~2週間もすれば大概気づきそうなもんだ。だが海外に目を向けると、「幽霊は実態としての脳を持たないために、記憶力が極めて乏しい」などと豪語するホラー小説もあって、油断も隙もありゃしない(※)。

 Youtubeには悪戯に恐怖をあおるような動画も多いが、そもそも必要以上に恐ろしい姿で出現する意味が僕にはどうしてもわからない。死因が凄惨な事故であったとか、心を病んで瘦せ衰えていたとかいうのならまだわかるが、果たしてどれほどの人間がそんな状況に陥るだろうか。一方で、死んだはずの祖父が庭先から穏やかな優しい表情でこちらを見ていた、なんていう話もある。要するに死者の魂をこの世に繋ぎ止める要因は、恨みつらみばかりではないということだ。本来であればどちらの場合も、出現したのが誰の霊なのかわからなければ、出現する意味がない。ただし踏切の女の子のように、偶然第三者が目撃する例もないではない。その場合は後日譚として幽霊の出自が明らかになることが多い。前出の「業界怪談」という番組は、体験者への(真面目な)インタビューも交えながら、こうした死者と生者のかかわりを巧みに描いていた。NHK、早く新シーズンを制作してくれないかな。

※「わたしが幽霊だった時」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著 現在は絶版のようだが古書はそれなりに出回っている。