カテゴリー
未分類

 ビールへのこだわり

 ビールの美味しい季節になってきた。目に青葉、山ホトトギス、初鰹。これで冷えたビールがあれば言うこと無し。前に珈琲のこだわりについて書いたが、僕はビールについても小さなこだわりがある。それは「グラスに注いで飲む」ということだ。

 日本では、上手な注ぎ方をすることで味が変わる、と言われている。ビールを注ぐ達人というのがいて、こういう人がビールを注ぐと、泡の気泡が細かく、クリーミーな味わいになるという。日本人にとっては、ビールの泡も大事な味の要素なのだということだろう。ところが欧米では、泡の立つ注ぎ方は怒られるんだそうだ。要するに「泡に金を払うつもりは無い」ということだ。いやはや、そうなんですか。ところで、僕はそんなふうに泡そのものにこだわっているわけではない。 

 夏場など、バーベキューをしながら、クーラーボックスから出した缶ビールを飲んでいるのをよく見かける。僕はあれがダメなのだ。ダメ、と言っても「飲めない」というわけではない。ただ、味が少々尖った感じがするのだ。缶から直接ビールを飲むと、ほとんどの場合、泡は立たない。せいぜい「プシュッ!」という程度だ。しかし、グラスに注げば少なからず泡が立つ。つまり、含まれている炭酸が泡となって放出される。これによって味がまろやかになったように感じられるのだ。少なくとも僕はそう信じている。だから昔流行ったコロナビール(今流行っているコロナウイルスじゃなくて)の飲み方も、ライムの櫛形に切ったヤツをねじ込んで、そのまま瓶から飲むのが粋なんだ、なんて言われても、必ずグラスに注いで泡を立て、あきれられたりしていた。いや、そもそもコロナビールはあまり飲まなかったかな。

 夏の夕暮れ時など、庭に出て空を眺めながらビールを飲むことがあるのだが、そんな時でも僕は必ずビアグラスを持って外に出る。無論珈琲同様、ここでも紙コップなどは愚の骨頂だ。ご近所からは「変なヤツ」あるいは「気取ったヤツ」と思われているかも知れないが、せっかくのビールを美味しいと感じながら飲もうとする以上、ここはやっぱり譲れない。ついでに言うと、暑い盛りにはドライタイプのビールをキンキンに冷やして飲むのが好きだ。ビールにはタイプごとに適温があって、特にイギリス人がよく飲んでいる「エール」というタイプなんぞは、ぬるいぐらいが一番美味しいという。試してみると確かにそうなのだが、そこはやはりイギリスの気候ならではの話で、日本の夏にはまったくマッチしない。正直に言いましょう。もうね、味なんかどうでも良いの。こんな状況では。冷たいのど越し、この一言に尽きる。

 どのビールが好きか、これは大事なところだが、加えてどんな状況で飲むのか、さらにどう飲むか。ここら辺はもっとこだわっても良い気がする。それによって飲みたいビールのタイプが変わることだってある。それで良いではないか。さきに述べたエールだって、冬場に暖炉の前で(暖炉無いけど)飲めばこれはこれで美味しいだろう。いつものことで恐縮だが、要はそういう楽しみ方をできるだけの、心のゆとりを持つことが大事ということだ。