カテゴリー
未分類

 ピーピー。

 ピーピー。「おい、誰か電子レンジに忘れ物してるぞ。」「はーい。」ピーピー。「だから電子レンジに・・・」「違うよ、今のはグリルの音だよ。」「いけね、魚焼いてたんだった。」ピーピー。お次は何だ。ファンヒーターの延長ボタンを押しなさいってか。ピーピー。おっと、冷蔵庫の引き出しが少し開いていた。ピーピー。・・・はいっ、今度は一体なんでしょー。「パパ、今のはテレビの中の音だよ。」

 カミさんと出かけるときはいつも僕がカミさんの、買ったばかりのNOAH君を運転する。するとここでも・・・ピーピー。「なに、今のなに。」「白線をはみ出してるって。」ピー。「今度はなに。」「よそ見するなって。」しばらく走っていると「新着ニュースがあります」おお、音声で来やがった。思わずモニターに目をやると、「走行中のため、表示できません。」だったらお知らせもあとにしてくれないか。

 浄水器はカートリッジの交換時期を伝えてくるし、水質を切り換えたときに水を出すのが早すぎると「蛇口の栓を閉めてください」なんてことまで指図してくる。給湯器も音声で「お風呂が沸きました」と伝えてくる。しかもこちらはBGM付きだ。以前使っていた給湯器は「もうすぐお風呂に入れます」なんていうメッセージまでプログラムされていた。だからといって、音声なら気が休まるかというとそんなことはなくて、ピーピー同様、いつも急かされているような気持ちになる。安全上の問題もあってのことだと思うが、この、機械になんだかんだ言われる生活、何とかならんかなあ。

 ところで前から気になっていたんだが、音声の場合のあの声は合成なんだろうか。それとも専門の声優さんがいるのかな。今は技術が進んでいるから、多分合成でいけるんだろうな。というのも、今時の固定電話は、登録した相手から着信した場合「○○さんです」って言うからね。ただ、「ママ携帯」とか入力すると、「ママ携帯さんです」と、なんだかケイタイさんが(誰だそいつは)電話してきたようなことを言う。最新機種はもう少し改善されてるのかも知れんけどね。

 ここまで書いて思いだしたことがある。1969年にマイケル・クライトン(ジュラシックパークなどを執筆した作家)が著した「アンドロメダ病原体」というSFで、衛星軌道上から衛星が持ち込んだ致死性の未知の微生物に対処するため、極秘裏に集められた専門家たちが、これまた極秘の研究施設で対策を講じるのだが、この施設の目覚まし機能が面白い。「お目覚めの時間です」という女性の、しかも妙に色っぽい音声で起こすのだ。主人公の一人が、思わず「君の名前は?」と聞くと、所内のサービスセンターに繋がり、係の男性に「博士、この計画をもう少し真面目に捉えてください」なんて言われちゃう。そしてその男性はこう続ける。「あれはこういった録音を生業としている70代の女性の声です。」博士はそれを聞いて思わず「おお。」でも確かに、オードリー・ヘップバーンやメーテルの声で知られる池田昌子氏も、いまだにナレーション等で何の違和感もなく活躍しているもんなあ。御年84歳ですってよ?あの声で、オードリーのキャラクター設定(アン王女がいいな)だったら、素直に家電の言うこと聞いちゃいそうだなあ(※)。今時だったら、押しの声優を選べるオプションとか設定したら、すごく売れると思うんだけど。少なくともピーピーよりは遥かに受け入れやすい気がする。もしくは、池田昌子氏に「ピーピー」って言ってもらうとか。さすがにそれは無いか。

※ アン王女は「ローマの休日(1953)」の主人公。

作成者: 835776t4

こんにちは。好事家の中年(?)男性です。「文化人」と言われるようになりたいなあ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です