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 イングリッシュ・ブレックファスト。

 日本におけるアイビー・ファッション界の重鎮にして服飾評論家のくろす・としゆき氏が、その昔、男性ファッション誌「メンズ・クラブ」の企画本「クロス・アイ」に、実際に経験したイギリスでのエピソードを書いていた。タイトルは「恐怖のイングリッシュ・ブレックファスト」。要約すると・・・

 イギリスを旅行して1日目の朝、ホテルの部屋に朝食が運ばれてきた。その量がものすごい。「ははあ、ツインの隣室に泊まっている連れの分もこちらに運んできたんだな」そう思った彼は、ベッドを出ると隣室に続くドアを開けた。「おい、こっちに朝食が届いてるぞ。早く来いよ・・・」思わず絶句した彼の目に飛び込んできたのは、同じく大量の朝食が乗ったトレイを前に、ベッドの上で唖然としている連れの姿だった・・・。

 このエピソードには写真も添えられていたのだが、現在馴染みの洋品店に貸し出しているので、ネットで見つけた画像を参考に、記憶にあるその内容を紹介しよう(記憶違いがあったらごめんなさい)。まずはトーストが2枚。カリカリに焼いた大きなベーコンが2枚。目玉焼きが二つ。オートミール1皿。ベークドトマト。ポット・サービスの珈琲と紅茶。オレンジジュースにミルク(牛乳)。ホットウォーター。そしてトーストを食べるためのバター、ジャム、マーマレード。ネットの情報によれば、場合によっては、さらに豆料理、ソーセージ、サラダ、プディングなどが付くこともあるという。勿論1人前だ。これがくろす・としゆき氏曰く、「恐怖のイングリッシュ・ブレックファスト」。

 イギリスでご馳走を食べるならホテルの朝食を食え、という言い方がある。作家のサマセット・モームは、イギリスで三度三度美味いもんが食いたいなら、朝食を朝昼晩と3度食え、と言い残している。それほどイギリスの朝食は内容(質ではない)・量ともに充実している。何でもこの豪華な朝食の習慣は、その昔、産業革命期に昼食をろくに摂れなかった労働者階級から始まったんだそうだ。そこに当時の「家族の絆を大事にしよう」という風潮が追い風となり、中産階級や上流階級の間でも、家族が一番揃いやすい朝食を大事に考えるようになっていったらしい。今ではサマセット・モームの言葉を意識してか、1日中朝食メニューを出しているレストランやパブも存在するとか。

 朝食と言えば、新婚旅行でウィーンに行ったときのホテルの朝食が忘れられない。パンもハムもソーセージも、そして大好物のチーズも、数種類をバイキング方式で食べることができる。しかも、どれをとっても本場物と謳っている日本のものよりも遥かに美味しかった。恥も外聞もなく、カミさんと二人して、朝から何度もおかわりをしてしまった。その土地の名物は、やはりその土地に行って食べるに限る、ということなのだろう。でも、だからといって、イギリスまで出向いて、あのイングリッシュ・ブレックファストを食べたいかというと、それはちょっと勘弁だな。

 さて、僕たちはその後パリへ行ったのだが、ここでの朝食は至ってシンプルだった。クロワッサンとフレンチ焙煎の珈琲(注文すれば紅茶やカフェオレも)、バターにマーマレード。これはイングリッシュ・ブレックファストに対してコンチネンタル(大陸式)・ブレックファストといわれるスタイルだ。最近ではハムやサラダ、ゆで卵などが付くこともあるようだが、朝が忙しい日本人にはこちらの方が合っているかも知れない。

作成者: 835776t4

こんにちは。好事家の中年(?)男性です。「文化人」と言われるようになりたいなあ。

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