映画の中の食事(3)
さて、このコーナーも3回目。今日はまず最初に、古典的名画「太陽がいっぱい(1960)」から。主人公の貧しい青年(アラン・ドロン)が富豪の友人と食事するシーン。魚料理(だったような気が・・・)を食べるのにフォークを使わずナイフだけで食べて、友人に「ちゃんとフォークを使え」と注意される。このナイフだけを使う食べ方は下層階級の象徴らしく、他の映画でも見かけることがある。何の苦もなく、美味しそうに食べてるんだけど、そもそもなんでナイフなんだ?フォークを優先させると思うぞ、普通。
有名な西部劇「シェーン(1953)」では、最期にシェーンと撃ち合う雇われガンマンが、バーの片隅でいつも珈琲を飲んでいる。手元が狂うから酒は飲まない、ということらしい。さすがは殺しのプロ。食事とは言えないが、印象的だったので紹介しておく。
西部劇といえば、「続・夕日のガンマン(1966」の食事シーンはその筋では有名だ。リー・バン・クリーフ扮する凄腕のガンマンが、テーブルで対峙した相手を睨みつけながら(そして時に不穏な笑みを浮かべながら)豆料理とパンを口に運ぶ。銃なんか使わなくても、相手は消化不良を起こして死にそうだ。このシーンはYoutubeで見ることができる。「続・夕日のガンマン 食事シーン」で検索。コメントも面白いよ。「給食の時にマネして叱られた」とか。
戦争映画では、よくこのブログで話題にする「眼下の敵」に、駆逐艦に狙われて動きの取れない潜行中のUボート(ドイツの潜水艦)の艦内で、料理兵が皆にスープを配るシーンがある。このスープが美味しそう。白いカップに垂れた跡や、飲みながら咀嚼している様子から察するに、かなり濃厚で、緊急時の食事がわりになるように実だくさんなのだろう。同じくこのブログでは常連の「頭上の敵機」では、士官たちが古くなったケーキを皆でつつくシーンがある。これも妙に美味そうだ。ただし、あまりにもボロボロで、もとがどんなケーキだったかは不明。戦闘シーンに本物の記録フィルムを使ったため、整合性を考え、あえてモノクロで撮られた映画なので、色から判断することもできない。スポンジ・ケーキである事は間違いないと思うのだが・・・。
映画ではないが、有名なTVドラマシリーズ「バンド・オブ・ブラザース(2001)」では、ノルマンディ上陸直後のアメリカ兵たちが「いったい何が入ってるんだ?」なんて文句を言いながら、トラックの荷台で食事をするシーンがある。その得体の知れない煮込み料理を運ぶために、食缶がわりに使っているのは、何と機関銃弾のスチール製のケース。そこへ様子を見に来た上官が匂いに気付き、「何だ、何か腐ってるのか?」なんて追い打ちをかける。すかさず兵士の1人が「マラーキーのケツ」。マラーキーとは同じ部隊の兵士の名前だ。これは食べたくないと思うのが人情だろう。
最期は「オリエント急行殺人事件(1974)」。1日目のランチ(※)にポアロが摂ったのは何と生牡蠣5個。それに櫛形レモンが添えてある(ランチだよ?あっちじゃ普通なんだろうか。それとも、「上流階級」とはこういうものなのか)。友人のビアンキ(ブーク)のオーダーはスモークサーモンのようだ。テーブル上にはドイツパンらしきものも確認できる。別のテーブルでは乗客のイタリア人がパスタを食べている最中だ。相席のイギリス人執事もパスタだが、よく見ると、何と彼はナイフとフォークでパスタを食べようとしている。つまりナイフでパスタを切って、という意味だ。あれって、かえって食べにくいんじゃないか?でも切るシーンだけで、残念ながら実際に食べるシーンはなかった。どうやって食べるのか見たかったなあ。ところでポアロは前の晩もこのランチでも、食後に緑色のリキュールを飲んでいる。あれはペパーミント・リキュールだろうか。リキュールのストレートって、よほどの通じゃなきゃ飲まないよな。
ちなみに新作の「オリエント急行殺人事件(2017)」に関しては、「まったく同じサイズの2個のゆで卵」しか印象に残っていない。そもそも作品自体あまり好きじゃない。新解釈かなんか知らんけど、ポアロにアクションなんかさせちゃいけませんよ。
※ 1日目、初の食事シーンなので朝食と思ってしまいがちだが、普段から遅く起きる習慣のラチェットをはじめ、ほぼ全員が食堂車に揃っていて、ウェイターがドラゴミロフ公爵夫人に夕食の注文を聞いている。また、殺人のあった翌朝、食堂車のテーブルにはコーヒーポットやティーポット、バター、ジャム、マーマレードらしきもの、クロワッサンのようなパンなどしか置かれていないことから、オリエント急行での朝食はコンチネンタル・ブレックファスト(パンと飲み物だけの簡単な朝食)と考えられる。というわけで、これはランチの場面。