カテゴリー
未分類

 西部劇っていつ頃の話?

 昔から西部劇が好きだった。両親の影響で、子どもの頃、TVの洋画劇場で何本も見た。そんな僕はある日ふと思った。これっていったいいつ頃の話なんだろう?南北戦争や第七騎兵隊の全滅、OK牧場の決闘など、映画で紹介された史実はいろいろと知っているのだが、日本だといつ頃に当たるのかがピンとこない。銃や鉄道や電信がある時代なのはわかっているけど、銃器はこの時期にものすごく進化している(※1)し、騎兵隊にしても時代によって二通りの解釈がある。つまり「南北戦争」の時の北軍と、それより後の「インディアン戦争」の時の騎兵隊。一般的に騎兵隊と言えば後者を指すことが多いが、両者を混同している人もいるはずだ。まあどちらも「合衆国陸軍」であることに違いはないんだけどね。でも南北戦争を描いた映画「騎兵隊(1959)」の北軍は帽子が黒(濃紺?)で、インディアン戦争時の「黄色いリボン(1949)」の騎兵隊はベージュの帽子というように、時代によってコスチュームや装備している武器などの備品に違いがある。勿論映画の時代考証が正しいとしての話だけど。

 あるとき、祖父が残した古い映画雑誌で良い資料を見つけた。少し前に紹介した「映画の友臨時増刊 西部劇読本」の中にそれはあった。「西部発展史年表」というページだ。ありがたいことに、日本の出来事を対応させてある。

 さて、それによるとアメリカの独立は1789年(寛政元年、徳川家治)。この頃に松平定信が老中になったり、「打ち壊し」が起こったりしている。「南北戦争」はこれより大分後のことで、リンカーンが大統領だった1861年から1865年半ばまで続いた。これはペリーが来航した1853年よりも8年も後のことだ。日本ではこの間(文久元年~慶応元年)に生麦事件、長州征伐等が起こっている。明治元年(1868年)をはさみ、1876年にはインディアン戦争のさなかに第七騎兵隊の全滅という事件が起こる。これが日本では明治9年、廃刀令が出された年だ。1881年にはワイアット・アープおよびその兄弟とクラントン一味がトゥームストーンのOK牧場(実際には牛を置く囲い)で決闘。日本では明治14年に当たり、板垣退助が自由党を設立している。1886年には伝説的なアパッチ族の大酋長ジェロニモが合衆国政府に投降。この年(明治19年)、日本では「少年よ 大志を抱け」で有名なクラーク博士が死去。1889年(明治22年)には合衆国政府がフロンティア・ライン(西部開拓の最前線)の消失を発表し、西部開拓時代はその終焉を迎える(※2)。その後大分経って、1929年(昭和4年)にワイアット・アープが80歳で死去。これはガン・ファイターとしては驚異的な長寿で、晩年には有名な映画監督ジョン・フォードとも親交があったらしい。

 こうしてみると、西部劇の時代とは、日本で言う江戸末期から明治にかけての期間と言えそうだ。思っていたより最近の話なので驚く。何よりもワイアット・アープと僕の祖父が時代を共有していたことがあるという事実は、何とも感慨深い。

※1 ガンマンがよく使っている拳銃「コルトSAA(ピースメーカー)」と、有名なライフル「ウインチェスターM73」は、ともに1873年以降のものだから、それ以前のエピソードに出てくるのは間違いだ。ただしウインチェスターにはほぼ同型のM66(1866年モデル、弾薬が古いタイプ)等があり、見分けがつきにくい。

※2 要するに、入植者が勝手に開拓していい土地はもうありませんよ、ということだろう。

作成者: 835776t4

こんにちは。好事家の中年(?)男性です。「文化人」と言われるようになりたいなあ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です