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 スイカの話

 つい最近、金色(こんじき)何とかというスイカをTVで紹介していた。常識では考えられない糖度をもつというレポーターのコメントを聞いて、思わず画面に目を向けると、大きさは大玉だが果肉が黄色い。「えっ、黄色…?」あっという間に興味が失せた。

 実を言うと僕は子供のころ、果肉の黄色い小玉スイカ(今は赤い果肉のものもある)に対してネガティブな先入観を持っていた。親が小玉スイカを買ってくると、なんだか騙されたような気持になるのだ。親としてはその価格や冷蔵庫の空き容量を考えて選んでいるのだろうが、子供にとって、そんな大人の都合は二の次だ。スイカは大きくて重く、皮が厚いのがえらいのだ。そして果肉はきれいな赤色でなければならない。それを丸のまま、ビニールひもで編んだ手提げに入れて持ち帰るのが定番だった。

 今でもそうだと思うが、当時の小玉スイカは形が縦に長く、切ってみると皮が薄かった。そして何よりも違和感なのが、その黄色い果肉。僕の中ではあくまでもこれはスイカとは似て非なるものであって、僕が納得するスイカではなかったわけだ。そしてその価値判断は主に「色彩」という視覚情報によってなされていた。だから今回の金色なんとかも、果肉が黄色いことを確認した時点で興味が一気に失せてしまったのだ。これは昭和生まれの世代にとって、クリームソーダが緑色でなければならないのと同じことで、青色のクリームソーダなんてもってのほか…えっ、そんなふうに思ってるのって僕だけですか?

 そんなわけで果肉の黄色いスイカは、それがどれほど美味しいとしても、そもそも食指が動かない。「三つ子の魂百まで」と言うが、確かに幼いころ植え付けられたイメージを払拭するのは並大抵のことではない。今回知ったスイカの銘品も、結局味わうことなく一生を終えるような気がする。

作成者: 835776t4

こんにちは。好事家の中年(?)男性です。「文化人」と言われるようになりたいなあ。

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