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 なぜ今、オールディーズなのか

 なぜ今、と言っても単に僕の中でだけのことであって、これはいわゆる「マイブーム」の話だ。ちなみにここで言うオールディーズとは1950~60年代に流行ったアメリカン・ポップスのことだ。

 今までにずいぶんといろいろな音楽に親しんできたけれど、この先は僕なんかには到底ついていけないような音楽がどんどん作り出されていくらしい。特に「ボカロ」で作られた音楽なんて、僕にはあまりにもせわしなくて、「音楽鑑賞」どころではない。歌自体も早口で、何を言っているのかよくわからない。これについては「ラップ」も同じことで、今の若者はよくあれが聞き取れるなあ、なんて思っていたら、彼らも聞き取れないことがあるんだってさ。だから歌詞は歌詞カードやネットで理解するらしいんだが、そもそも歌詞が聞き取れないんじゃ歌を聞く意味がないな、なんて思ってしまう。おそらく今の若い人たちは音楽に関して、僕らの世代とは全く違った価値観を持っているのだろう。

 こうした新しいタイプの音楽に比べると、オールディーズは単純明快だ。特に50年代なんて、歌詞なんかどうせ色恋沙汰でしょ、という感じだし、英語の表現自体も簡単だから、英語をきちんと勉強していれば(してないけど)だいたい意味は分かる。単純明快なだけに、何も考えずに聞けるのも良い。では僕がお気に入りの、1970~80年代についてはどうか。

 このころの音楽にも名曲はたくさんあるが、今思うと内容はかなりヘビーだった。すべてとは言わないが、政治的だったり思想的だったりで、それこそ歌詞カードの和訳を読んで連帯感を感じてしまうような、メッセージ性の高いものもあった。そういった意味では、当時の僕たちもそれまでとは違う価値観で音楽を聴いていたと言えなくもない。それはそれで意味のあることだったと思うけれど、そうしたメッセージも、今では人々の口の端にも上らない。やはりあの時代の音楽はあの時代を生きた者にしかわからない。もっと言うならあの時代に聞いてなんぼの世界だ。それを思えば、オールディーズは歌詞の内容が普遍的な男女の恋愛だったりするから、場合によっては70年たった今でも何の抵抗もなく聞けてしまう。

 良い例として、今ではスタンダードと言ってもいい名曲「アンチェインド・メロディ」は、1955年にリリースされて大ヒットし、1965年にはライチャス・ブラザースのカヴァー・バージョンが再ヒット。さらに1990年にはこのバージョンが映画「ゴースト/ニューヨークの幻」の主題歌に使われて再々ヒットとなった。現在そのカヴァー・バージョンは、新旧合わせて500を超える。普遍的な音楽は時代を超えて愛され続ける、ということだ。

 つまるところ、オールディーズの魅力はそのシンプルな構成と内容の普遍性にあると言えそうだ。そして時にそのメロディーは、こうした音楽が象徴する古き良き時代、人々が今より楽観的で、未来という言葉に一点の曇りもなかった時代へのノスタルジーを呼び覚ます。僕のような50年代を知らない人間でさえ、憧れを禁じ得ない。これもまた、大きな魅力の一つと言っていいのではなかろうか。それはつまり…えーと…要するに、歳をとったということですね。

作成者: 835776t4

こんにちは。好事家の中年(?)男性です。「文化人」と言われるようになりたいなあ。

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