People Get Ready
「ピープル・ゲット・レディ」という曲があって、これがなかなかいい。しばらく忘れていたが、1週間ほど前、どうしても聞きたくなって古いCDを引っ張り出した。
僕が初めてこの曲を聞いたのは、1993年にリリースされたロッド・スチュアートのアルバム、「アンプラグド(※)」に収録されたカヴァーバージョンだった。宗教がかった内容のゴスペル調の曲で、初出は1965年。インプレッションズというR&Bグループのオリジナル・ナンバーだ。当時アメリカで盛んだった公民権運動を意識して作られたという。
さあ、準備して 列車がやってくる
切符はいらない 信じる心があれば
だから さあ、準備するんだ
ヨルダン行きの列車に乗るために
海岸線を列車は走る 新たな旅人を乗せながら
けれど 私利私欲に囚われた 罪深き者の席はない
彼らを憐れもう 王座の前では
隠れる場所など ありはしないのだから
ここで言う「ヨルダン」とは単なる地名ではなく、旧約聖書の「出エジプト記」でイスラエルの民が目指した「約束の地」のことだ。
僕は宗教的な人間ではないが、母がクリスチャンだったこともあり、一番親しんだ宗教といえばキリスト教。そのせいかどうかはわからないが、好きなジャンルにはゴスペル調の曲も多い。ついでに言うと、R&Bやカントリー&ウエスタン寄りのロックも好きで、例えばかの有名なザ・バンドやキム・カーンなんかもよく聞いた。実際、この数週間は「ザ・ウェイト(ザ・バンドの曲)」を聞いていた。この曲にも聖書の中の固有名詞がいくつも使われていて、その流れで久々に聞きたくなったのが「ピープル・ゲット・レディ」だったというわけだ。
実を言うと、ロッド・スチュアートのバージョンばかりを聞いてきた僕が、オリジナルが1960年代の曲であることを知ったのは比較的最近のことだった。Youtubeでオリジナルを聞いてみると、アフリカ系アメリカ人のコーラスによるパフォーマンスは、そのままゴスペルといってもいい趣で、実にすんなりと心の中に入ってくる感じだった。
そもそも宗教というのは、心穏やかに生きるための一種の哲学のようなものだと僕は思っている。世界には様々な宗教が存在するが、仮に神様が存在するとしたら、こんなちっぽけな地球を導くために二人も三人もいらないだろう。それにおそらく、長いこと宗教を後ろ盾に争ってきた人間を見てあきれ果てているに違いない。
疲れているな、と感じるとき、僕はシンプルに音楽を聴きたくなる。意図的に向き合わずとも自然に耳に入ってくるからだ。それがこうした宗教がかった音楽ならなおのこと、僕のような特定の信仰をもたない者でも穏やかな気持ちになるから不思議だ。それに頼るかどうかは別として、人知を超えた大きな存在をそれとなく感じさせてくれるからだろう。
※「アンプラグド」ロック歌手などが電気を用いる楽器を使わずに歌唱・演奏したアメリカのMTVライブ(TV番組)と、それをCD化したシリーズ。タイトルは「電源プラグを抜いた」という意味。