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 続 昔はみんな旅に出た

 以前、若者が旅に出る話を書いた。今日はその続編。というのも、前回触れなかった曲で、やはり若者が旅に出る歌をもう一つ思い出したからだ。きっかけは旧車のオーナーを訪ねてレポートするTV番組。日産のスカイラインGTRが紹介されていた。

 スカイラインといってもいろいろあって、現行は13代目。昔は年代別にニックネームをもっていた。ハコスカ、ジャパン、鉄仮面・・・そして「ケンメリ」。車に詳しい人ならご存じだと思うが、この「ケンメリ」は正式に言うと「ケンとメリーの愛のスカイライン」ということになる。長ったらしく、口はばったい感じだが、これはTVコマーシャルに登場した男女のカップル、ケンとメリーに由来する。当時のキャッチフレーズも「ケンとメリーのスカイライン」あるいは「愛のスカイライン」。このスカイライン・ケンメリのCMに使われていたのが「BUZZ(バズ)」というフォークデュオの「ケンとメリー~愛と風のように」という曲だった。この曲の存在をすっかり忘れていた。

 この曲はもともと4代目スカイラインのCMのために作られたようだ。だからシングルでリリースされたものとCMで使われたものの二つの歌詞があり、CMソングにはしっかり「愛のスカイライン」という言葉が入っている。ところで、僕がこの曲をとても気に入っていたにもかかわらず、前回思い出せなかったのにはわけがある。ここに登場する二人は恵まれすぎているのである。何しろリア充で(歳のいっている人のために説明すると、しっかりおつきあいしている)、自分の車を持ち(しかも○ニーや○ローラではなく、スカイライン!)、お金に余裕があって、しかも暇を持て余している(日本中を巡る旅に出る。ロケ地の一つ、北海道には二人が撮影のために訪れたポプラの大木があって、今でも「ケンとメリーの木」と呼ばれている)。神田川の見えるアパートに住み、横町の風呂屋に通うカップルとは大違いだ。つまり、前回紹介した曲とは主人公たちの住む世界が違いすぎるために、記憶の網に掛からなかったのだ。

 「ケンとメリー~愛と風のように」は当時としてはとてもハイソな、お洒落な曲だ。後のJポップの走りのような曲調。歌詞を読んでも、「もうここにはいられない」といった悲壮な雰囲気は微塵もなく、「今こそ希望に満ちて出かけよう、新しい何かが見つかるかも知れない」といった前向きな内容だ。まあ、CMソングだから当たり前か。実際、スカイラインに乗って横町の風呂屋へ行くリア充カップルなんて誰も想像できないよな。駐車場とか無さそうだし。ところでその歌詞だが、これがまたなかなか詩的でかっこいい。

いつだってどこにだって 果てしない空を風は歌ってゆくさ  今だけの歌を 心はあるかい 愛はあるのかい

見慣れた時計を部屋に残して 今が通り過ぎてゆく前に    朝が来たら 出かけよう 今が通り過ぎて行く前に      愛と 風のように      

                (歌詞カードより抜粋)

 ちょっと良いでしょう?曲自体のアレンジは時間とともに変わっていくのだけれど、やっぱり最初のオリジナルが好きかな。

 前回紹介した曲とはかなり毛色が違うけど、こういう旅も、まあ、アリということで。