夏といえば怪談 2023「おかえり。」
シャミという名の、うちで飼っている猫どもの女ボスは、僕がベッドに入るとおなかの上に乗ってくる。読書などしようものなら、「私がここに居るのに、なんで本なんか読んでるのよ?」と言わんばかりに猫パンチを浴びせてくる。もちろん本に、だけど。でも君ねえ、もういい歳のおばさんだろ・・・いやいや、そういう話ではなかった。実はおなかの上にシャミが乗っていると、時には乗っていなくても、近頃もう一匹が足のあたりに跳び乗ってくるのだ。以前は身体を起こして確かめたりもしてみたのだが、そこには何も乗っていなかった。
最も多いとき、うちには8匹の猫がいた。みんなもとはノラで、4匹はうちの敷地で生まれた。この何年かで3匹を失い、今は5匹。亡くなった1匹は老衰による腎不全、あとの2匹はうちで生まれた兄妹(多分)で、遺伝的に身体が弱かったらしく、1匹はやはり腎不全、もう1匹は何とかいう血栓のできる病気で亡くなった。シャミはこの2匹を含む4匹を産んだ母猫だ。
昨日の夜もシャミは僕のおなかの上で眠り、夜半過ぎに、足もとにもう1匹が跳び乗った感触で目が覚めた。タオルケットの上に着地したときの、「ぽふ」という音まで聞こえたような気がした。今では身体を起こして確かめることはしない。ただ小さな声で「おかえり。」と呟く。