ELF(2003年)
クリスマスが間近のこの時期になると、お気に入りのクリスマス映画をよく見る。「ELF」はその中の1本で、邦題は「エルフ ~サンタの国からやってきた~」という。これは実によくできた映画で、コメディではあるものの、ちっとも嫌みがなく、最後には思わず涙がにじむ感動のラストシーンが用意されている。
主人公のエルフ(実はエルフに育てられた人間)をアメリカのコメディアン、ウィル・フェレルが演じ、ワキを名優ジェームズ・カーン(ゴッドファーザー)、メアリー・スティーンバージェン(バック・トウ・ザ・フューチャーPART3)、ズーイー・デシャネル※(あの頃ペニーレインと)が締める。
この映画の良さは観ないとわからないだろうから、ここではあらすじなんか書かないけど、一つだけ、ポイントとなるのが、サンタの橇を飛ばすエネルギーはクリスマスを信じる心、クリスマススピリットである、ということ。最近はサンタクロースを信じる人が減り、橇にジェットエンジンを装着して何とかしのいでいるのだが、そのエンジンも思わぬアクシデントでどこかへ飛んで行ってしまう。こうなるとトナカイ9頭のパワーだけでは浮くことさえままならない。クリスマスはいったいどうなってしまうのか?…とまあ、こんな感じ。
監督はこの映画の成功を機に「ザスーラ」や「アイアンマン」などを撮ることになるジョン・ファブロー。だが僕に言わせれば、何よりも脚本が優れていると思う。あちこちにちりばめられた伏線が見事に回収され、感動のラストへと収斂していく。コメディのセンスも、欧米の作品によくある「面白そうなことやってるけど、ちっとも可笑しくない」などという場面はほとんど無くて、むしろ不意を突かれて思わず笑ってしまうようなギャグが多い。
後で考えるとツッコミどころも無いではないが、鑑賞中にそれを感じさせないのは監督の手腕だろう。そしてラストの感動を経験してしまえば、そんなことはどうでもよくなる。音楽もいい。各所でさりげなく使われていたテーマがラストシーンでは壮大な盛り上がりを見せる。アレンジの妙というほかはない。この曲が無かったら、ラストシーンの感動は半減していただろう。
ネットで調べてみても軒並み高評価で、多くのファンが「もっと評価されるべき」と書いている。僕もそう思う。だが日本では封切りもされず、ディスクも大分前にDVDが出たきりだ。それでいてアマゾンプライムでは有料視聴アイテム。わけがわからない。
まあディスクが無いわけではないし、アマプラでも一応視聴可能ではあるので、ぜひ観てほしい。僕のなかでは最近、傑作ミュージカル映画「クリスマス・キャロル(原題「スクルージ」 1970年)を抜いて「最も好きなクリスマス映画ベスト1」になりつつある。正直、特典満載のBDが出てもいいくらいだと思っているんだけど。

※ 余談だけど、ズーイー・デシャネルは欧米に日本のランドセルを流行らせた1人としても有名。ネット上には赤いランドセルを肩にかけた彼女の画像が複数存在する。これが「ランドセルをアレンジしたバッグ」じゃなくて、まんま日本のランドセルなんだよね。