キドニー・パイ
本題に入る前に一言。どうも前回、一度UPした原稿を再度UPしてしまったようです。すんません。このところ柄にもなく忙しくて、疲れていたのかも知れないね。ほら、こういうときだよ、リポビタンDを飲むのは。今切らしてるけど。
さて、本題。スコットランドの郷土料理、キドニー(腎臓)・パイ。それを初めて食べたときのことを書く。実際に食べたのは、大分前にUPしたハギスと同じ頃。コロナウィルスが蔓延する直前のことだ。
この料理、以前から興味はあったのだが、ネットで見つけたイギリス料理の特集記事で「不味い」と断言されていたので、実は注文するのも恐る恐るだった。例によってアマゾンで注文、イギリスのお店から直送、のパターン(現在取引停止中)。忘れた頃にやってきた荷物を開封してみると、直径20センチぐらい、厚さ2.5㎝ぐらいの缶詰が2缶出てきた。ハギスと同様プルリングは無し。中身がどうなっているかはまるで想像できない。だってパイですよ?パイの缶詰って、普通に考えたらパイ皮にソースがしみこんで、へろへろになっていそうじゃないですか。それって一種のホラーに近い。このまま開けて食うのだろうか?手がかりを求めて缶をひっくり返してみた。すると・・・あった!手がかりが。調理方法(英語)だ。・・・調理?缶詰なのに?まあ良い。とりあえず読んでみよう。なになに?「まず缶切りで蓋を開ける。」そんなことは言われなくてもわかってる。「手を切らないように注意してね。」大きなお世話だ。だったらプルリングつけろよ。「そのままオーブンに入れ、230度で25~30分ほど焼く。」なるほどね。これをこのまま焼きなさいと。やっと納得できた。しかし、まだ不安が残る。骨董品になりかけの缶切りを使って蓋を開けてみたところ、思った通りパイ生地が部分的にソースに浸っている。経験上このまま焼いてもパリッとした仕上がりにはならないのじゃないか。ええい、考えていても仕方が無い。オーブンを指定の温度にセットして、とりあえず焼いてみた。するとこれが見事に焼き上がったではないか。イギリス人もやるもんだ。だが、まだ根本的な問題が残っている。そもそもこのキドニー・パイは美味いのか。
書くのを忘れていたが、今回のこれは、缶の表記によれば「ステーキ&キドニー」パイ。これがキドニー・パイの正式名称らしい。イギリスでは、材料や味付けによって様々なバリエーションが存在するという。
さあ、食べてみよう。まずふくれあがったパイ皮を崩す。サクサクしていて良い感じだ。濃いブラウンソースをかき回すと何か得体の知れない塊が出てくる。えっへっへ。思わず笑いが出る。不思議なことに、人は不安になると思わず笑ってしまうことがある。具の問題ではない。実はこのソースがすごいのだ。おそらく一種のブラウンソースだが、異様なほど均一。普通この手のソースは表面に油が浮いていたり部分的に濃淡があったりするものだが、とにかく均一。色も質感も、まるで使い古したエンジンオイルのよう、と言えば、見たことのある人はイメージできるだろう。
とりあえず一口スプーンに取り、口に運ぶ。「・・・。」なんだこれは。よくわからんぞ。パイ皮の香りがする。塩味もする。そして・・・それだけ。あれだけ濃厚な色のソースなのに、塩味しか感じられない。朝使ったリステリンの影響がまだ続いている?それはないだろう。体調が悪いのかな?いやいや、ビールは美味しくいただいているぞ。ということは・・・そういうことだ。
そんなわけで、キドニー・パイの1缶目は惰性で平らげてしまった。何しろ味らしい味がないのだから、美味しいも不味いもない。いつまでも取っておいても仕方が無いので、それから1週間ほどして、2缶目を開けた。2度目だから手慣れたもんだ。あっという間に、と言っても25分かけて焼いたパイを一口頬ばった。すると・・・あれ?前のやつより味がする。食べ物に対して味がするという評価もおかしなものだが、それが正直なところだ。「あー、レバーが入ってるな。尿線の匂いがするから間違いなく腎臓も入ってる。尿線の匂いが残ってるってことは、下ごしらえで手を抜いたな?それともイギリスではこれが普通なのか・・・」これが第一印象。どうです。食レポが劇的に違うでしょう?今回はソースも心なしかコクがあるような・・・。ところで憶えてます?食べた時期こそ1週間の差があるが、この2缶は同時に買ったものだ。実は以前購入したハギスにも同じ事を感じた。1缶ごとに微妙に味が違うのだ。いろいろな部位のミンチが混じっているからどうしてもむらができるのか、それともイギリスの食品会社の製品管理がこのレベルなのか。キドニー・パイはミンチを使っていないから、後者しか考えられない。
結論。キドニー・パイはもういらない。少なくとも、この「ステーキ&キドニー」に関しては。決して不味いとは思わないが、リピーターになるほどの味ではない。でも、今後本格的な、正真正銘のキドニー・パイを食べる機会があったら、是非とも再挑戦してみたい。