夏といえば怪談 2023 「見える人」
少し前に、ある知人から聞いた話。今年中学生になった息子さんが、突然「脳外科か眼科に連れて行って欲しい」と言いだしたんだそうだ。息子さんは小さいころから影のようなものをよく見るそうで、最近それが人間であるとわかるほどはっきりしてきたとのこと。毎日のようにその人物が視界の片隅に現れて、何をするにも気が散って仕方がない、という。勿論、現実にそこに人が居るわけではない。ということは、つまりアレか?
僕は言った。「それって、いきなり病院でいいのかなあ。どこか、そういう相談を受ける寺なり神社なりを探した方が良くない?」「それなら知ってるところがあります。前に祖父が・・・」「あるのかよ!」「ええ。前に祖父が遠方で亡くなったときに家族がみんな熱を出して、そのときに相談した神社があるので、そこなら相談できるかも。まあ、発熱は祖母が出向いて供養したのを境におさまったんですけどね。」血筋じゃないか。こりゃあ本物かも。「だったらまずその神社に相談してみた方がいいよ。いきなり病院だと、ろくに話も聞かずに別の科に回されるかもしれない。精神科とか。カルテだって残るだろうし。」「そうですよね。ちょっと考えてみます。」
僕は「見えない人」だし、心霊現象について確信があるわけじゃない。もしかしたらあるのかも、といった程度のスタンスだ。だが見える人や感じる人にとって、それは日常だろうから、「そんなこと、有るわけ無いじゃないか」とは言わない。そもそも、100パーセント否定できる根拠もない。何しろ今までにも書いてきたように、あれはいったい何だったのだろうか?という経験は、僕も複数回ある。
自分の体験のみならず、僕の周りには不思議な体験をした人が少なくない。僕が面白がるからか、そうした体験談は自然と僕のもとに集まってくる。勿論その中には気の迷いや思い込みであると判断できるものも多い。僕のように遠近両用メガネを掛けていると、視界の片隅で影が不自然に動くことなどしょっちゅうだ。だがどうしてもそういった説明では納得できないものもある。今回の息子さんのように、それが人の形をしているというのであれば、おそらくそれは、いわゆる「怪異」なのだろう。古来、こうした話題は人の心を魅了し続けてきた。ある意味僕も、その虜になっている一人であることは否定できない。
これも以前に書いた気がするが、僕はUFOなら見たことがある。ただしそれは単に「あれ、あそこを飛んでいるあれは何だろう?」といった程度の、文字通り未確認の飛行物体を見ただけであって、窓があったとか、それが着陸して小さな灰色の、目がでかい宇宙人が降りてきたとかではない。だがそれらはジグザグに、鋭角的に飛ぶオレンジ色の光であったり、何度も同じ場所に出現を繰り返すまばゆいばかりの光点であったりする。説明がつかない、という意味では同格だが、心霊となると自分の目で見たことが無いからなあ。実際に見れば信じるだろうけど、できれば見たくない。それが本音だ。だから「見える人」の境遇が理解できると言ったら、それは嘘になる。でも、センス・オブ・ワンダーの塊である僕としては、全面的に否定することはしたくない。いや、むしろあったらいいな、と思う。そんなわけで、今度知人に会う機会があったら、その後どうなったかを詳しく聞いてみたい。