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 CMという名の名画劇場

 今でも覚えている印象深いCMがある。例えばサントリーのショーン・コネリーが出てたやつとか、ダーバンのアラン・ドロンが出てたやつとか。まるで短編映画のような趣があり、画面作りもめちゃくちゃ凝っていて、宣伝する商品よりもCMそのもののほうが印象に残る。BGMも、もしかするとその為に作曲されたんじゃないかと思うほど(本当のところはわからない)マッチしていた。そして何よりも、商品とはまったく関係ないようにすら思える重厚な語り。ウイスキーのCMのなかで「時は流れない それは積み重なる」なんて言ってみたり、スーツのCMのなかで「彼は幸せか これだけがたったひとつの友達への問いかけ」なんて言ってみたりするのである。しかも、映像の中の人物がカメラ目線になることはなく、このへんも映画っぽい。おそらく「こんな人生を送る人がこのウイスキーを飲むのだ」とか、「このスーツを着るのだ」という回りくどい言い回しなのだが、それが妙に説得力があった。僕もあんな人生を送ってみたい、こんな場面に出くわしたい、と思わせる何かがあって、だまされてるなあ、なんて思いながらも納得してしまうのだ。ウイスキーなんて、宣伝されている銘柄を美味しいと思ったことがなかったとしても、なんだかその銘柄を飲みたくなる。そうすればあんな人生を送れるかもしれないという、大いなる大誤解。ああ、クリエイターの感性、恐るべし。しかも嬉しいことに、これらはCMであるから、何度でも無料で見ることができた。

 ほかにも「果てしない創造への旅立ちが、今、始まる」(ニコンF2フォトミック)とか、「UFOの出そうな荒野で 羊飼いの青年に会った。(中略)僕らは本当に豊かなのかな」(サントリーオールド 羊飼い編)などという語りもあって、これがまた、BGMと相まってかっこよかった。僕なんぞは、サントリーとダーバンのCMについては新作(商品ではなくCMの)が待ち遠しくて、それがたいしたことなかったりすると本気でがっかりしたものだ。

 今ではそれほどお金のかかった(ように見える)CMはほとんどない。ビールなんか、グビッと飲んでいきなり「うまいっ!」なんて言う。演出も何もあったもんじゃない。押しつけのように感じてしまう。「いや、オレも飲んでみたけど好みの味じゃなかったよ」と返したくなる。うまいかどうかの前に、味がない。(うまい!自画自賛。)

 イメージが近いCMがないわけではない。焼酎二階堂のCM。あれはよくできている。ただ、とても日本的で、マイナー調なのが残念。・・・待った。ひとつ思い出した。缶コーヒーのボス。アメリカの名優、トミー・リー・ジョーンズ、どんだけ日本好きなんだ、とか思ってしまう。往年のものと比べるとかなり安っぽいが、平成最後の総集編など、胸が熱くなる。・・・あ、そうか!ボスの会社はサントリーだった。こうして細々と続いているわけね。

 これらのCMは今でもYouTubeで見ることができる。同じように感じている人がいるらしく、ダーバンなんて、きちんと編集したりしているところを見ると、相当好きなんだろうなあ。サントリーも上記したものの他に「スタインベック編」とか、「ヘミングウエイ編」などと銘打ってUPされているものもある。そのうちブルーレイとかで販売してくれるかも。そうしたら真っ先に購入するんだけど。

作成者: 835776t4

こんにちは。好事家の中年(?)男性です。「文化人」と言われるようになりたいなあ。

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