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 食の東西対決

 僕は関東に住んでいる。だけどすき焼きは関西風が好きだ。ザラメと醤油のみで味付けする。ある時TVでその調理法を知り、試してみたのだが、すっかり気に入ってしまい、以来関東風には戻れなくなってしまった。関東風は割り下を使うので、「すき焼き」とは言うものの、むしろ「鍋」に近い。これは多分、「牛鍋」の存在が影響しているのだろう。

 ウナギの蒲焼き、これも関西風の方が好きだ。蒸しの工程を含まず、しっかりと小骨まで焼き上げるスタイルだ。柔らかすぎない食感がいい。京都に行った時に、錦市場にある店でお土産に買い込んでくるのだが、地元ではなかなか手に入らないので、普段は関東風を食しているというのが現状だ。だが正直なところ、すき焼きほどのこだわりはない。どちらかと言えば、という程度のものだ。

 考えてみると、桜餅も関西風の方が好きだなあ。小麦粉を焼いた皮よりも、あの「道明寺」のもっちり感が好きだからだ。ちなみに僕は桜の葉は剥がして食べる。葉を一緒に食べるのが通、という説もあるが、どうも怪しい。というのも、店によっては2~3枚の葉で包んであったりするからだ。これでは何を食べているのかわからんではないか。そこはやはり、香りだけを楽しむのが粋なようだ。

 ところで、僕はすべてが関西風好みというわけではない。例えば、雑煮は関東風がいい。醤油仕立てのだしに焼いた角餅を入れ、鶏肉やかまぼこ、三つ葉などを具に使ったあれだ。京都風の、甘めの白味噌仕立てなんて言われると、箱根の山の向こうまで逃げ出したいぐらいだ(近づいてるじゃんか)。

 一番判断が難しいのは蕎麦。江戸前の蕎麦つゆは、それを持って関東風とは言いがたい。じゃあ、どこの蕎麦が関東風かというと、これはこれで釈然としない。間を取って、長野県あたりで食べる蕎麦が一番美味い、ということにしておこう。うどんについては、これは蕎麦とは似て非なるもので、つゆの味は何といっても四国あたりにとどめを刺す。

 話を世界に広げて、今度は洋の東西。ウィーンの銘菓、ホテルザッハのザッハトルテは、我が家では国産の「デメル・ジャパン」のものがお気に入りだ。というか由緒正しいザッハトルテはこの店のものしか手に入らない(※)。

 「デメル」の本店はウィーンにある菓子店で、創業は1786年。その昔、ザッハの子孫から販売権を買い取ったとして、ホテルザッハとどちらが元祖か裁判で争ったこともある。結果はレシピを考案したホテルザッハの勝利。そのホテルザッハのものを現地で食したことがあるが、日本人には少々甘すぎる気がした。だがあえて言うと、デメル・ジャパンのものはアンズジャムの酸味が「元祖」に比べて弱い。それもそのはず、ジャムの層が1層しかないのだ(これがデメル製の特徴の一つ。ホテルザッハのものは2層で、このスタイルがオリジナルと言われている)。

 もう一つ、デメル・ジャパンのものはコーティングのシャリシャリ感もあまり感じない。ウィキペディアによれば、コーティングは純粋なチョコレートではなく、「チョコレート入りのフォンダン(糖衣)」ということだから、もう少しそれらしい食感があっても良さそうだ。要は好みの問題だが、それだけに何とも悩ましいところだ。

 ところでもうお気づきだと思うが、もし日本で売られているデメル・ジャパンのザッハトルテが、日本向けの味ではなくオリジナルレシピで作られているとすれば、「洋の東西対決」は成り立たないことになる。むしろホテルザッハVSデメルと言うべきか。でもまあ、それはそれということで。

※ 実はホテルザッハも通販を行ってはいるのだが、日本向けのページがあるわけでもなく、文面はすべて英文(独文?)で、気軽に購入するにはちょっとハードルが高い。