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 秋の食卓

 なんだかんだ言っているうちに、もう9月も半ばを過ぎた。今年の中秋の名月は見事だったなあ。庭に勝手に生えたススキに、今年は今見頃の萩と、近所の藪で見つけたカラスウリを添えて飾った。何を隠そう、僕は生け花の師範免許を持っている。今も時々TVで見かける金髪の生け花作家、假屋崎氏とは若い頃一緒に学んだ間柄だったりする。今は昔。

 この時期になると何となく和食が食べたくなる。五目混ぜご飯とか、桜でんぶの入った太巻きとか、いなり寿司だとかが特に恋しくなる。もしかすると小さい頃の運動会の、お弁当メニューの影響かも。その他にものっぺい汁とか里芋の煮っ転がしとか。これらはおそらく僕の生育歴によるもので、誰もがそうとは限らないだろうけど。

 うちには「聞き書き ふるさとの家庭料理(全20巻 農文協)」なる全集があって、今は卓上に「13巻 秋のおかず」が出してある。これは単なるレシピ本ではなく、土地土地の古老などから聞いた料理のいわれや作り方を、写真入りで紹介している。だから材料は書いてあってもその分量などは書いてなくて、どちらかというと文化的な内容の全集だ。近所の書店でこれを注文した時、店長に「あの・・・図書館の方ですか?」と聞かれたのを思い出す。そりゃあね、個人でこれを注文するような物好きはそうそういないだろうからね。

 以前に紹介した「一度は使ってみたい 季節の言葉」と同様、時々引っ張り出しては眺めている。季節のおかずの他にも、「餅 雑煮」「寿司 なれ寿司」「日本の正月料理」等、テーマ別に料理を紹介している巻もあって、なかなか面白い。

 実際に料理を作ろうとするならば、うちで最も心強い味方は、学研の「食材クッキング辞典」であろうか。この本は大判で、食材ごとにその料理法を数多く紹介している。ある時この本のレシピできんぴらゴボウ(ただし竹輪の代わりに鶏肉を使用)を作ったら、亡き母の味とほぼ同じものができた。それ以来この本に頼ることが多くなった。特にブリの照り焼きのたれや、煮魚の煮汁の味は、僕の人生経験と照らし合わせて何の違和感もなかった。この味のマッチングは本当に奇跡的。長いこと人間やってると、そんなこともあるんだねえ。 

 さて、今夜は五目混ぜご飯を作るとしよう。近々予定しているのは例の鶏肉入りきんぴらゴボウ。里芋の良いのが出回ったら、のっぺい汁(これまた鶏肉入り)にひもかわ(群馬県あたりのうどんの一種)を入れて食べよう。クリご飯も良いな。夏の終わりは寂しいものだが、それもつかの間、今は実りの秋の楽しさでいっぱいだ。