春・夏・秋・冬
前回紹介した中島みゆきの「傷ついた翼」と因幡晃の「思いで・・・」はネットで検索すると、いろいろとそれなりにヒットする。別に意地になっているわけではないが、今日はなかなか検索に掛からない「春・夏・秋・冬」という曲について。
この曲を初めて聞いたのは何十年も前のこと。その頃僕は、やっと買ってもらったラジカセ、ソニーCF1050・通称「DJ」(とても気に入っていた)で毎日ラジオ放送をエアチェックするのが日課だった。でも悲しいかな、このラジカセはモノラルで、FM放送のステレオ録音はできなかった。そんな頃に僕が住んでいた地方のラジオ局で、ほんの1、2回だけリクエストされた曲、それがこの「春・夏・秋・冬(はる・なつ・あき・ふゆ と読むらしい)」という曲だった。普通に検索すると、出てくるのは泉谷しげるの「春夏秋冬」という曲ばかり。そもそも「春・夏・秋・冬」のほうは歌手が誰なのかもわからなかった。声は井上順に似ているが違うらしい。フォークソングのようにも聞こえるが、思い当たる歌手がいない。曲名だけをたよりに何度もネット検索を試みたが何もヒットしない。あきらめかけた時に、突然ある情報が飛び込んできた。「知恵袋」かなにかのページにそれはあった。僕の他にもこの曲について知りたがっている人がいたわけだ。
「後藤明が歌った曲ですね。TBSの「おはよう」というドラマのなかで歌われていました。『水曜劇場の時間ですよ』というタイトルのCDに収録されていますよ。」
そんな内容のアンサーを見つけたのだ。いったいこの人誰?なんでそんなこと知ってるの?早速ネットで探してみると・・・あった。アマゾンで見つかった。即カートに入れた。
届いたCDの解説を読んでいろいろと納得。作詞はなかにし礼、作曲は三木たかしという、昭和歌謡のゴールデンコンビであった。編曲もすごいよ、深町純という人。ストリングスがえらく盛り上げてくれる。なるほど、フォークソングではなかったのね。スタッフや曲の雰囲気から考えると、もっと流行ってもいい曲なんだけどなあ。でも「後藤明」を検索すると、文化人類学者とかが出てきちゃうから、歌手の後藤明はメジャーにはなれなかったんだろうねえ。
歌詞は「まだ見ぬ恋人をさがしに行こう、いつか君に逢える」というぐらいの意味だが、探し方が四季折々で良い。1番の歌詞はこうだ。
夏になったら 朝の汽車に乗って
海辺づたいに 旅をして
君をさがしに行こう 陽に焼けた君を
春 夏 秋 冬 いつの日にか
春 夏 秋 冬 君に逢える (歌詞カードより)
夏から始まって春に終わるのも良い。春は古い背広を脱いでさがしに行くんだよ。さわやかな君を、ね。
この曲を聴いた当時、僕も夜空を見上げながら、まだ見ぬ人のことを思い、「もうこの空の下のどこかで生きているんだよな・・・」なんて考えていたことを思い出す。当時の若者は夢多く、純粋な生き物だったんだよ、諸君。ネットもスマートフォンもなかったから、本を読み、音楽を聴き、いろいろなことを考える時間がたっぷりあったからね。