クリスマスが楽しいぞ!
上の娘が「そろそろ結婚しようかと思って。」と言うので、「良いんじゃね?」と答えた。別に驚きもしない。付き合っている男性がいるのは知っていたし、長いことその事実を知っているのは父親である僕だけ、という状況が続いていたからだ。なに、普通の家庭と逆だって?うん。うち普通じゃないから。最近ではむしろ、「さっさとケリをつけたらどうだ?」などと、結婚を促すことも多かった。それがやっとこさ、重い腰を上げたというわけだ。「大げさな披露宴とかやるつもりはないんだけど、結婚に当たって何かこれだけは、という希望はある?」と聞くので、「子どもは作れ。」と言っておいた。
上の娘は今年28歳。下の娘は23歳になる。この長い子育て期間の中で僕が心がけたのは、僕が親にしてもらったことは全部してやろう、ということだった。これは口で言うのは簡単だが、時代や性別の違いからいろいろと実現しづらいこともあった。だが今思うに、+αのほうが多かったような気がする。カミさんの実家がもともと兼業農家ということもあって、娘たちは田植えや味噌造りの手伝いなど、僕が経験してこなかったことも経験できたし、畑を手伝っている最中ににわか雨に遭遇した下の娘が、大きな里芋の葉っぱを傘がわりにして帰ってきたこともあった。
最近毛嫌いする人が増えているようだが、学校の子供会や地域の夏祭りは僕にとっては楽しい経験だった。もし子どもがいなかったら、あれはやらなかっただろう、あ、これも多分ここまで本格的にはやってないだろうな・・・そんなことがたくさんある。正月の餅つきに始まって、節分にお盆、七夕なんていうのもあったな。そして我が家の年末最大の行事であるクリスマス。この行事の醍醐味は子どもがいればこそのものだ。ここ数年は下の娘がケーキ作りにハマって、既製品のケーキを買うことはほとんど無くなった。その娘も今年就職したので、今までみたいには行かなくなるのだろうなあ。
世間では子どもを虐待し、事もあろうに死に至らしめる親がいると聞く。悲しいことにそういったニュースは年々増えているようだ。だが、これはあくまで例外であると確信している。もう一つ、これは世の男性諸君に伝えたいことだが、父親にとっても子育ては楽しいものだ。子どもがいたおかげで経験できたこともたくさんある。育児を嫌う父親のほとんどは食わず嫌いのようなものだろう。加えて、仕事が忙しすぎて、育児に費やす時間が取れない場合もある。だが、時間とは作り出すものだ。近年ではそれができる環境も整いつつある。事実、以前は娘から「洗濯物を一緒にしないで」とまで言われていた世の父親たちも、大分威信回復してきていると聞く。
僕自身の子ども時代を振り返ってみると、両親は一緒にいる時間を工夫して作り出し、子どもを楽しませるための努力を惜しまなかった。大事なのは、そんななかで自分たちも楽しんでいたということだ。僕はそんな両親を見ながら育った。今の若い世代は、子どもを作りたがらない人が増えているそうだが、それは親の苦労ばかりを見せられてきたからかも知れない。さらに現代では、個人がスマホ(というかネット)に費やす時間も多い。こういった「自分のための時間」の妨げになる存在はいらない、ということもあるだろう。だがこれについては今後、さらに大きな問題になっていくような気がする。子ども(他者)のために自分の時間を犠牲にすることは子育ての基本だし、延いては人間関係の基本でもあるからだ。子育てはそれを学ぶ機会をくれる。どんなに歳を重ねても、その年齢や状況に応じた成長というものは存在するのだ。だがその機会を嫌い、放棄すれば、結果は「停滞」しかないだろう。娘たちにはそんなつまらない人生を送って欲しくはない。