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 見えすぎ。

 タイトル見て変な誤解した人いない?子供が抱く将来の夢の話なんだけど。

 兵庫県の全国学力調査に伴う質問紙調査で、将来の夢や目標をもつ児童・生徒の割合が過去最低の水準だったんだって。ニュース記事ではかなり問題視していたようだけど、考えてみれば至極当然で、今更驚くほどのことでもない。だって、情報化社会と称される現代では、どんな疑問もたちどころに答えが得られるし、子供がまだ知らなくてもいい情報で溢れかえっているからね。

 最近の子供たちって、将来どんな仕事に就きたいかを聞くと、会社員、なんて言う。業務内容はさておき、とりあえず「会社員」。定期的な収入が保証されるから、というのがその大きな理由で、一昔前の「公務員」と同義らしい。ところが、ネット上では「ブラック企業に関するニュース」であるとか、個人のUPした「パワハラで鬱病になった話」とかのネガティヴな情報が蔓延しているわけで、それを見た子供たちが「世の中って、こうなんだ」なんて思い込んだら、夢をもてなくなるのも無理はない。要するに、行く末が見えすぎるんだね。しかも歪んだ形で。というのも、もっといい話だってたくさんあるのに、困ったことにそっちの方はなかなか話題に上らない。そりゃそうだ。自分の境遇に満足している人たちは愚痴らないし、当然ニュースにもならない。まあ、世の常ってやつだ。

 将来なりたい職業で、会社員と双璧をなすのがYoutuber。長いことこの状況を「困ったもんだ」と思っていたんだけど、今になって思えば、子供にとってこんなに夢のある職業はないかもしれない。自分にそれをするだけの知識と技能があれば、誰でもすぐになれるし、スポンサーがつけばそこそこ収入も期待できる。実際にその道で高収入を実現している人もいて、なるほど、これは現代のサクセスストーリーと言えなくもない。個人で番組を運営する分にはパワハラ上司もいないし、客の顔色をうかがう必要もない。メディアを扱う上での倫理観と、経済観念さえしっかりしていればなんとかなりそうだ。しかも職業(?)としての歴史が浅いので、ネガティヴな情報も少ない。Youtuberとして一生を送った人はまだいないからね。要するに、先が見えない分夢見る余地がある、ということだ。ただし、現状では昇給もボーナスも、退職金も期待できない。保険やローンなどについてもまだまだ立場的には弱者だろう。そういう意味では一種の自営業。確定申告も大変そうだ。子供はそのへんを認識していないから、「将来の夢」として確固たる地位を維持しているんだろう(あー、言っちゃったよ)。

 人生には必ずしも知らなくていいこともたくさんある。それが何のフィルターも介さず(端末側のフィルターなんてたかがしれている)、子供の発達段階も考慮せずに提供されているのがいわゆる情報化社会なんだよな。子供は情報を正しく取捨選択することはまだできないし、むしろ好奇心旺盛だから、大人が制限しない限り何でも吸収してしまう。しかも人の悪口だろうが社会に対する愚痴だろうが、1回聞いただけならすぐに忘れるかもしれないことを情報として保存できる。要するに定着しやすい。こうして小さいうちから社会の裏側を見ているわけだから、そりゃあ夢なんかもてませんて。大体最近の大人は自分たちでそういった環境を構築していながら、そんなこと気付きもしないもんね。じゃあ家庭はどうかというと、自分の子供がどんな記事を閲覧しているのかを100パーセント知っている親なんかいないだろうし、下手をすると「それは子供の人権の侵害だ」なんて的外れな理屈を振りかざしたりするから困ってしまう。ここはプロとしてはっきり言わせてもらうが、素人考えもはなはだしい。そもそも「子供の人権」は「発達段階」の問題とは切り離して論ずるべきものだ。そのことが理解できれば、害をなすのはエロ・グロばかりじゃないこともわかるはず。親は法的に「保護者」と言われる存在(親以外の場合もある)だが、なぜ「保護者」なのか、何から保護するのか、そのことをもう一度、よく考えてみるといい。

 何はともあれこの現状、なんとかできる立場の人が早急になんとかしないと、20年後の日本が心配だよなあ。