おでんの具
おでんにソーセージを入れるか入れないか。この論争はその筋では有名な話で、僕自身は入れない派。だからカミさんの実家のおでんにソーセージが入っているのを見た時に、「えーっ!」と思った。昭和の、少なくとも僕の知っているおでんではあり得ないことだったからだ。逆に僕が自分の思うおでんを披露した時に家族が一番驚いたのは、僕がおでんの具としてジャガイモを入れたことだった。
前回書いた屋台のおでんにはジャガイモは必ずと言って良いほど入っていた。出しがほどよくしみ込み、それでいて煮崩れしないように炊いたジャガイモはとっても美味。だから僕の中ではおでんにジャガイモが入っているのは当たり前のことだったし、調べてみればジャガイモを入れているおでん屋は結構あるものの、幼少時にカミさんの実家で世話になっていた娘たちにとっては、ソーセージ入り・ジャガイモなしのおでんが定番になっていたらしい。
そもそもソーセージおでんの出現は、ある時期にポトフとおでんのイメージが混在したことに原因があるようだ。だが、よくよく調べてみると、確かにポトフを「洋風おでん」と称することはあるものの、実はこちらもソーセージは入らない。欧米では煮込み料理の風味付けに燻蒸した保存肉(ベーコンやソーセージ)を加えることが多いので、そうしたアレンジをされたポトフのイメージがおでんにも伝播したのかもしれない。何しろ数多くのポトフレシピを紹介しているネット記事でも、材料として必ずと言って良いほどソーセージが含まれている。オリジナルのポトフにわざわざ「牛かたまり肉を使ったポトフ」なんて見出しがついているのを見ると、やれやれ、なんて思ってしまうのだが、まあ「時代」なんでしょうかねえ。
確かによくできたソーセージは美味しいし、僕の好きな食材の一つでもある。焼くか揚げるか、温める程度にゆでて食べることが多い(※)。良い出しが出るのも事実だ。だからポトフの具材として定着するのはわかる。だがおでんに入れるとなると、ソーセージの薫香は強すぎて、繊細なおでんの関西風出しの香りを台無しにしてしまうような気がする。勿論ソーセージの入ったおでんを否定するわけではないのだが、どうも「別もの」感が拭いきれない。結局二鍋作ることになってしまう。馬鹿だねえ。こだわりすぎだよ。
※ レタスを一緒に湯がき、ソーセージの皿に残ったゆで汁に粒マスタードを溶かし、ちょっとクタクタになったレタスを浸して食べるのがなんとも美味しいのですよ。