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 知ることの意味 その2

 東欧がえらいことになっている。早いとこ停戦に持ち込めれば良いのだけれど。

 日々明らかになる状況をチェックしているのだが、そんな中で自戒の念にさいなまれる瞬間があった。どういうことかというと、この件に関して、最初は多くの人々と同じように、R国は悪い、U国は良いという単純な公式のもとに物事を判断していた。ところが調べを進めるうちに、事はそう単純ではないことがわかってきた。

 2014年のクリミア問題、U国の歴代大統領の変遷にかかわる政策のブレ(親R路線と親欧米路線を行ったり来たり・・・。)、そんな中で親R派の国民と親欧米派の国民の間で何度も紛争が起き、今回P氏が勝手に独立を認めたU国東部の2地域(親R)は実際に迫害されてきた経緯がある。それどころか、その際ネオナチの極右グループが実働部隊として政治的に利用されていたことも事実だという。

 2014年には現地の親R派が武装蜂起、同時にクリミアでも親R派が独立を宣言し、その後自らR国に併合を持ちかけている。それを受けて起きたのがクリミア併合だ。つまりこれらの地域へのR国の干渉は、U国政府の弾圧に喘いできた一部の地域住民の意志を受けてのものなのだ。ただし、こうした手順はもちろん国際法に違反するし、この時行われた意志決定のための住民投票が正当なものだったかどうかはわからない。今回に限らず、あの辺の地域は情報の隠蔽や操作は普通に行われていることだからなあ。

 U国東部地域では、以来8年間にわたって紛争が続いているが、これまでに死者が14,000人に達しているにもかかわらず、このことは日本ではほとんど報道されていない。さらに調べを進めると、P氏をあそこまで追い込んだのは西側かもしれないという構図まで見え隠れする。

 P氏は侵攻の理由の一つとして、NATOが東方への勢力不拡大の約束を破ったと主張するが、NATO内部でも、東西ドイツ統合の段階でこの約束があったとする一派と、そんな約束はなかったとする一派が存在する。問題は公式文書が存在しないことで、言った、言わないの争いだという。何ともお粗末な話だ。今回の戦争状態は、このように長期にわたる複雑な問題の集積の結果なのだ。だが理由はどうあれ戦争は悪。これは単純明白な真理だ。

 U国の立場で言えば、事の始まりはもっと時をさかのぼる。スターリン政権のソヴィエト連邦時代に冷遇され、特に1930年代前半の世界恐慌下、U国はホロドモールというかなりひどい仕打ちをされたことがある。これについては僕も知っていたし、最近「赤い闇」という映画にもなった。この時の恨みは今もU国の歴史を黒く覆っている。このホロドモール(人為的大飢饉、餓死者は1,000万人を越えるとも言われている。詳しくは「ホロドモール」で検索のこと)の黒幕はスターリンだったが、最近のP氏を見ていると、スターリンの怨念が乗り移ったかのようだ。政敵の粛正を含め、人権無視や情報の隠蔽、虚偽の言動や約束無視などはお手の物だ。(※)

 結論として、P氏のやっていることは擁護すべき理由が1ミクロンも見つからないが、最近のU国情勢をよく知らずにあれこれ考えていた僕は、多少なりとも反省せねばなるまい。どうもこういった大陸的な問題は、島国日本の国民にはそう簡単には理解できないものがあるように思う。だから今は、早く戦争が終わって欲しい、とだけ言っておく。それにしても、P氏は色々と大丈夫なんだろうか。今後が心配で仕方が無い。

※「カティンの森事件」というのを検索してごらん。ついでに「大粛正」も。気持ちが重く沈んでしまうから。