バタークリームとアンズジャム(12/26)
さて、今年も我が家のクリスマスパーティーが無事終わった。物価高騰の折、金を掛けずに見てくれだけでも華やかにと思い、今年は定番のラムチョップに加えてローストポークを調理した。これをハニーマスタードソースで食べると結構イケるのだ。それに北欧ではクリスマスにローストポークは定番だから、文化的にも間違っちゃいない。さらに市販のチキンレッグとローストビーフを例年より少なめにして、代わりにスモークサーモンをマリネしてサラダ仕立てにして出した(これはカミさんが担当)。よしよし、これで何千円か節約できたぞ。
ケーキはこれまたいつもの、次女が作るバタークリームケーキと、僕が担当の「白い」ブッシュドノエル。これは生クリーム仕立てで、中にダークチェリーを入れてある。加えて今回はチョコレートクリームのブッシュドノエルも作った。これは例年だと市販品枠だから、これでさらに節約できる。何、ケーキが多いって?いいんです。何しろ3家族が集まって、お持ち帰りも恒例だからね。だけど正直なところ、子供たちが成人し、大人たちが老いてきたので、来年は全体的に量を減らした方が良いかもな、というのが今年の実感だった。もっとも、孫ができれば状況はまた変わるだろうけど。
今年はシャンパンも少し格を下げたので、結果的に例年の6~7割程度の予算で見た目には変わりない、というかより豪華に見えるパーティーを演出することができた。うーん、1970年のミュージカル映画、「スクルージ」に登場するボブ・クラチット(※)から学んだことは多いぞ。
クリスマスが終わり、今日は26日。今年ももう残り少ない。晴れ渡った空を眺めながら、おやつ代わりに食べ残しのバタークリームケーキをつついていたら、なんだかいろいろなことが頭に浮かんできた。
娘の作るバタークリームはそれこそ昭和の時代、子供だった頃に食べた味そのままで、ケーキやチキンレッグを買った当時のデパ地下の様子や、家に飾ってあった生木のクリスマスツリー、ボール紙と銀紙で作られた安っぽいツリー飾りなどが思い出される。そういえば、当時のガラスオーナメントは文字通り本物のガラス玉(特に高級品というわけではなくて、それが普通だった)で、下手に扱うと簡単に割れてしまうような代物だったなあ。それにケーキは当時、バタークリームの方が一般的だった。苺のショートケーキもあることにはあったが、それは高級品で、家計にとって幸いなことに、僕は色とりどりに飾られたバタークリームケーキの方が好きだった。挟んであるのはアンズジャムで、良くも悪くも甘ったるいバタークリームの味をアンズの酸味が上手く緩和していた。これはおそらく、当時の菓子職人がザッハートルテのレシピから学んだんだろうな。だとすれば、単に安く上げる手段ではなく、ちゃんと味のルーツがあったって事だ。
母がクリスチャンだったこともあって、子供の頃のクリスマスはまるで夢のようだった。おそらく子供を楽しませるためにいろいろと工夫してくれたんだろう。今ならそれがわかるし、自分の子供たちにも同じようにしてきた。その娘たちも今は29歳と24歳。家族に「子供」がいなくなったので、クリスマスは少し寂しいものになったが、上の娘が今年の夏に結婚したから、じきにまた賑やかなクリスマスが戻ってくるだろう。その時新しく両親になった二人が、どこまで我が家のクリスマスを受け継いでくれるかはわからないけれど。
※ 映画「スクルージ」の原作は言わずと知れた「クリスマス・キャロル」。ボブ・クラチットは「スクルージ&マーレー商会」で働くたった一人の従業員で、子供たちに安月給を感じさせないように、口八丁手八丁で豪華なクリスマスを演出する。