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 替え歌とザ・ドリフターズ

 「誰かさんと誰かさんが麦畑・・・」で始まる歌がある。まんま、「誰かさんと誰かさん」という歌で、ザ・ドリフターズが1970年にヒットさせたコミック・ソング。だが実はそれ以前から「故郷の空」という曲名で、別の歌詞の元歌が存在している。「夕空晴れて秋風吹き・・・」で始まる、故郷の親兄弟を思う歌だ。僕は小さい頃の記憶から、こちらの方が親しみがある。しかし、実はこの歌はさらにさかのぼって原曲がある。スコットランド民謡の「ライ麦畑で出会ったら」という曲だ。「ライ麦畑で出会ったら 二人はきっとキスをする」といった内容なので、ドリフターズの「誰かさんと誰かさん」はより原曲に近いと言える。

 原曲の詩を書いたのはスコットランドの国民的詩人、ロバート・バーンズで、以前にも触れたと思うが、「蛍の光」の原曲、「オールド・ラング・ザイン」の詩を書いた人。「オールド・ラング・ザイン」は、過ぎし日の思い出を友と一緒に懐かしむ歌で、「蛍の光」とメロディーは同じでも、内容が大分違う。

 明治時代、海外の文化が盛んに取り入れられ、日本の欧米化が進んだこの時代には、こうした外国の曲が輸入され、それに日本語の歌詞をつけた歌曲が盛んに作られた。ほぼ直訳のものから「故郷の空」や「蛍の光」のように、全く違う歌にしてしまっているものまであって、後者に至っては、替え歌同然だ。だがそれなりの人が詩をつけているので名曲も数知れない。しかもそのほとんどが文語で書かれている。文語表現の好きな僕にとっては喜ばしいことこの上ない。

 替え歌とは関係ない話だが、「誰かさんと誰かさん」をヒットさせたザ・ドリフターズ(要するにドリフ)。実は1950年代にアメリカでも「ザ・ドリフターズ」というR&B系コーラスグループが結成されており、度重なるメンバー交代を経て現在に至るまで、解散したという話は聞いていない。つまり元歌ならぬ元グループが存在するわけで、アメリカで「ザ・ドリフターズ」を話題にすると、とんでもない食い違いが生じる可能性が高い。日本の、いわゆる「ドリフ」は1956年に結成されたが、元々は純粋にバンド活動をしていて、コミックバンドに趣向替えした後の1966年に「ザ・ビートルズ」の来日公演で前座を務めたのは有名な話。また、2001年にはNHKの紅白にも出場し、松田聖子と対決している。演奏の技術は本物、ということだ。