ゲテモノ?それとも美食?
熊の肉をもらった。鹿やイノシシはもちろん、マガモやワニなども食べたことがあるが、熊は初めてだ。くれたのは懇意にしている保険会社の女性。映画好きで、真っ黒のボルボに乗り、知人にはヤバイものが見える人がいるという何とも魅力的(?)な人。この人は何か面倒な食材が手に入ると、僕に電話をかけてくる。この前は「ヒナが入っていたら食べないでくださいね」とか言いながら、合鴨の卵(生)を持ってきたっけ。恐ろしい話だ。想像してみてください、ゆで卵からヒナの死体が出てくるところを。ちょっとしたホラーじゃありませんか。多分監督はデビッド・リンチあたりだな。心理的にぐいぐい来そうだ。
幸い全てが無精卵だったのだけれど、実を言うとぼくはこういうタイプのおつきあいが少なくない。「マガモのロース。散弾が入ってたらよけて食べてね(昔の同僚)」であるとか、「アブラボウズ(魚です。僕もその時初めて知りました。)の切り身です。脂がすごく多いから食べ過ぎると腹を壊しますよ(教え子の親)」であるとか。今回の熊肉は「○○さん(僕のこと)料理できるし、珍しいもの好きそうだから、食べるでしょ?」何を根拠に言っているのだろう。
その昔、職場の食事会とかで(ごくたまに)高級な日本料理店に行くのが楽しみだった。アワビのツノだとか白子だとかが出ると、みんな僕のところに回ってくるからだ。食べてみれば美味しいのに、イメージや見た目だけで食材を嫌う人の何と多いことか。なにしろ言い訳が良い。「僕は庶民で良いんです」だって。僕だって立派(?)な庶民なんですけど。いやその前に、アワビのツノや白子は庶民が食べてはいけないものなのか?だいたいこういう人たちはウニやイクラは喜んで食べるんだよね。卵巣は良くて精巣はダメ、これは明らかに性差別であろう。違うか。
それで熊の肉なんだけど、上手く下処理しないと臭みが強いというのは知っていた。が、今回の肉は獲った直後に上手に処理(血抜きとか)されたらしく、そのままステーキ(味付けは塩・コショウのみ)として食べても美味であった。残りの半分は鍋にして食べたが、アクらしいアクも出ず、歯ごたえはあるがすっと噛み切れ、繊維が残ることもなく、家族で美味しくいただいた。正直なところを言うと、もう少し獣肉っぽい癖があっても良かったような気がする。でもこれはリピートしたいぞ。保険屋さん、またよろしくね。
うちに「珍(めずら)かなるもの」が集まってくることは前記したとおりだが、よく考えてみると件(くだん)の保険屋さんもすごい。そのルートの一つになっているわけだから。しかも頻度としては一番だ。いったいどんな人脈をお持ちなのだろうか。熊肉についてはどこぞのジビエ料理店経由(だから下処理済みだった?)ということだったが、前回の合鴨の卵はどのようなルートで入手したのだろう。何にせよ今後も期待が膨らむばかりだ。保険屋さん、これ読んでます?次はカラスが食べてみたいです。
いやー、解約しなくてホント、良かったなあ。